MASイノベーションが提供するオフィス

大企業による多岐にわたる支援は、知名度や資金力、そして経験値も低いスタートアップ企業にとっては大きな存在です。特に重要となるのがコラボレーションするための「場所」。今回は、開放的なスペースによって生まれた、新たなビジネスのチャンスをご紹介します。

本業とのシナジーを求めて先行投資

スリランカ最大手のアパレル企業のグループ会社で、スタートアップ企業を支援しているMASイノベーション。その目的はスタートアップの営利化ではなく、スタートアップを選り抜き、体制作りやビジネスモデル構築に必要なノウハウを得るきっかけを提供し、スタートアップに付加価値を与えることだ。MASイノベーションが特に注目するのはテクノロジー産業、eコマース産業、ウエアラブル産業そして健康産業といった分野だ。

 

「MASイノベーションは、場所、デザイナー、部品や設備の調達、そして法律や資金のサポートを得やすい環境を提供します。私達がそれと引換に望むことは利益のわずか一部です。多くても10~20%でしょうか。起業家は支配株主で居続けることができます」とMASイノベーションの最高財務責任者のAmrah Akbar氏は話す。

 

MASイノベーションが提供するスペースの特徴は、人々のコミュニケーションやコラボレーションが生まれやすい開放性にある。100人分の客席を設けられるスタジオでは、プレゼンやセミナーの会場として使用できるし、小さなブースや会議室はミーティングに使える。アクセラレーター・プロジェクト(※1)のために用意された部屋は、スタートアップ企業がMASイノベーションや投資家などの外部の第三者とコラボレーションし、ネットワークを築き、アイデアを更に推し進めていく場所として提供される。

多様な人材が集結することで、新たな分野を開拓

Maradanaにある鉄道用の貨物上屋置き場は長年、荒廃し放置されていたが、政府によるリノベーションを経て、今ではスリランカで最も革新的なテクノロジー系企業が複数入居する、現代的で自由な雰囲気を持つオフィス複合施設になった。

 

見放されていた場所に、再び命を吹き込んで再生した点だけでも注目に値するが、そこに入居する新しいテナント企業群がTRACE Tripoli Expert City(以下、TRACE)と呼ばれるテクノロジーキャンパスを作り上げた。

TRACE Tripoli Expert City
TRACE Tripoli Expert City

TRACEのテナントには、CodeGen International社、Calcey Technologies社、WSO2社、そしてtelco Mobitel社などがいる。このような優秀な人材とアイデアが集結したことで、TRACEはロボット工学のワークショップ、ハッカソン(※2)やその他テクノロジー関連のイベントが開催される場所としてのステータスを確立した。ここに入居するテナントにとってそれらのイベントは、自分たちが取り組んでいるテクノロジーを披露する場になり、優秀な人材を確保する機会にもなる。

 

TRACEで活動をしているCodeGen社は、中核事業として旅行業関連のソフトウェア・ソリューションを開発してきた。しかし拠点のアドバンテージを活かして、TRACEに拠点を置く他のチームとともにEVスーパーカー開発という、新たな事業にも挑戦している。


次回は、デザイン業界ならではの「場所」の活用法についてご説明します。

 

※1アクセラレーター
企業の成長やプロジェクトを加速させ、ビジネスを拡大させることに重きを置いて、経営アドバイスやノウハウの伝授、資金調達のサポートなどを行う役割を持つ。似たような役割にインキュベーターがあるが、インキュベーターはより新しい企業を対象とする(インキュベート:孵化する)

※2ハッカソン
「ハック」と「マラソン」を合わせた造語で、ソフトウエア開発のイベント。一定期間内に、テーマに沿ったプログラムを、単独あるいは複数人のチームで開発を行い、その優劣を競う。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年7月に掲載した「Space To Collaborate」を、翻訳・編集したものです。

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