1980年から始まったワーキングホリデー制度(通称ワーホリ)。昨今、日本の賃金の相対的な低さや円安などを背景に、ワーホリを利用した海外出稼ぎ就労者が増えています。もっとも、当然ですが海外での就労にはリスクが伴うことも忘れてはいけません。そこで、ワーホリの実態とリスク、注意点についてみていきましょう。FP Office株式会社の山本志歩FPが解説します。
日本おわりっしょ…難関私大卒も〈月収19万円・貯金50万円〉の27歳女性「ワーホリ」でオーストラリアへ→“給与3倍で大喜び”から一転、“泣きながら後悔”のワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

出稼ぎのために「ワーホリ」を利用する若者が増えている

令和以降、収入増加を目的に、いわゆる“出稼ぎ”として「ワーキングホリデー制度」を利用する若者が激増しています。

 

「ワーキング・ホリデー制度(以後、ワーホリ)」の本来の目的は、「休暇や国際交流」です。外務省のホームページによると、下記のように定められています。

 

ワーキング・ホリデー制度とは、二国・地域間の取決め等に基づき、各々の国・地域が、相手国・地域の青少年に対し、休暇目的の入国および滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度です。各々の国・地域が、その文化や一般的な生活様式を理解する機会を相手国・地域の青少年に対して提供し、二国・地域間の相互理解を深めることを趣旨とします。


出所:外務省「ワーキング・ホリデー制度※1」

 

なかでも人気のオーストラリア…日本との賃金差は“2倍以上”に

現在は世界で30ヵ国・地域と協定を結んでおり、なかでも渡航先として人気が高いのは、オーストラリアです。留学エージェント「スクールウィズ」が行った「2024年度版 ワーキングホリデーにおける国別、最低賃金月収の実態調査」でも、2位にランクインしています。

 

出所:スクールウィズ「2024年度版 ワーキングホリデーにおける国別、平均月収の実態調査※2」 ※物価スコア……日本の物価スコアを1としたとき、各国・地域がそれと比較してどれだけ物価が高いか・低いかを表した数値。物価スコアの出典:世界平和度指数(Global Peace Index),NUMBEO,セカイハブ ※アイスランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドは最低賃金が定められていないため除外。 ※最低賃金が時給の場合、8時間×20日(160時間)として算出。 ※月収の為替は2024年9月10日時点のレートで算出。
[図表1]ワーキングホリデーにおける国別、最低賃金月収ランキング 出所:スクールウィズ「2024年度版 ワーキングホリデーにおける国別、平均月収の実態調査※2」
※物価スコア……日本の物価スコアを1としたとき、各国・地域がそれと比較してどれだけ物価が高いか・低いかを表した数値。物価スコアの出典:世界平和度指数(Global Peace Index),NUMBEO,セカイハブ
※アイスランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドは最低賃金が定められていないため除外。
※最低賃金が時給の場合、8時間×20日(160時間)として算出。
※月収の為替は2024年9月10日時点のレートで算出。

 

日本との地理的な近さや治安のよさ、オーストラリア国内の最低賃金の上昇などから人気を集めています。

 

コロナ禍を挟んだ約4年間で3割近く「円安・豪ドル高」に振れたこともあり、日本とオーストラリアの月給の差は2倍以上に広がっています。この30年、オーストラリアだけでなく、海外における賃金水準は国によっては2倍から3倍に増えているにもかかわらず、日本人の労働賃金は増えず、長いあいだ停滞しているのが現状です。

 

出所:厚生労働省「令和4年版労働経済の分析-労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-」コラム1-3-①図 G7各国の賃金(名目・実質)の推移※3
[図表2]G7各国の賃金(名目・実質)の推移 出所:厚生労働省「令和4年版労働経済の分析-労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-」コラム1-3-①図 G7各国の賃金(名目・実質)の推移※3

 

“ワーホリ=ガッポリ稼げる”は本当?…行った先で直面する「厳しい現実」

こうしたデータをみると、「日本にいるより海外に行くほうがガッポリ稼げる」と思ってしまいそうですが、実際には「想像と違った」と落胆して帰国の途につく人も多いのが現状です。大学時代の友人の誘いに乗り、オーストラリアへ渡航した27歳のTさんもそのひとりでした……。