1980年から始まったワーキングホリデー制度(通称ワーホリ)。昨今、日本の賃金の相対的な低さや円安などを背景に、ワーホリを利用した海外出稼ぎ就労者が増えています。もっとも、当然ですが海外での就労にはリスクが伴うことも忘れてはいけません。そこで、ワーホリの実態とリスク、注意点についてみていきましょう。FP Office株式会社の山本志歩FPが解説します。
日本おわりっしょ…難関私大卒も〈月収19万円・貯金50万円〉の27歳女性「ワーホリ」でオーストラリアへ→“給与3倍で大喜び”から一転、“泣きながら後悔”のワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Tさんの心が折れた“予想外”の悲劇

軽い気持ちで渡航を決めたTさんですが、Kさんとともに見た動画サイトで特集されていたのは、ワーホリの“光”の部分。実際にワーホリを利用した人のなかには、100社以上受けても一切受からず、履歴書を片手に職を探しさまようケースも少なくないといいます。

 

Tさんも、スムーズに仕事が決まらない日々にやきもきしていました。そんななか、苦労の末にとあるレストランが雇ってくれることに。月々の給与は3倍に増え、「こんなにもらえるんだ!」と大喜びのTさんです。

 

ただし、オーストラリアは物価高。収入は増えたものの、日本にいたころとは違い生活費もかかり、貯蓄に回す余裕はありませんでした。

 

そんなある日、Tさんは思わぬアクシデントに見舞われます。

 

休暇中にアクティビティを楽しんでいたところ、ビーチの岩につまずき転倒。病院に運ばれた結果、Tさんは足の指の骨が折れており、全治3週間と診断されたのです。

 

それまで大きなケガや病気にかかったことがなく、「渡航先で病院に行く機会もほとんどないだろう」と保険に最低限の保障しかつけていなかったTさんは、高額な医療費がほぼ全額自己負担に。さらに、治療のため仕事は休まざるをえませんでした。

 

「もしかしたら解雇されちゃうかも……」「こんなことになるなら、もっと考えておくべきだった」「親に会いたい、友達に会いたい。早く帰りたい……」Tさんは、経済的にも精神的にも追い込まれていきました。号泣するTさんの頭によぎるのは後悔の念ばかりです。