住宅購入価格の高騰を背景に、ペアローンを検討する人が増えています。ペアローンにより、借入可能額が増えることで、より高額な物件や立地のよい物件など、選択肢が広がることが検討する理由のようです。また、住宅ローン控除の二重適用という税制上のメリットも。一方で、リスクも無視できません。39歳の田中夫婦(仮名)の事例をもとに、FP Office株式会社の茂野博起FPが解説します。
惨めだな…世帯年収1,100万円・39歳夫婦が6,500万円のマイホームを購入→“理想の家族”と周囲から羨望のまなざしも、11年後「誰も予想していなかった未来」に悔し涙のワケ【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

これ以上ない幸せだ…“誰もが羨む日々”を送る田中家

田中さん(仮名・50歳)は、都内に勤めるサラリーマンです。11年前、39歳のときに長年憧れだったマイホームを妻とのペアローンで購入しました。

 

その妻とは同じ職場の同期として出会い、子どもができて産休・育休を挟んた後、現在は夫婦共働きで頑張っています。当時、田中さんは年収600万円、妻は500万円と、世帯年収は1,100万円ありました。

 

収入が十分にあることと、長男が小学校に上がるタイミングということもあって、住宅購入を決断。2人が選んだのは、郊外にある6,500万円の新築戸建て住宅でした。

 

購入に際しては「支払額が一定のほうが安心だから」と、固定金利型(年2.20%)の住宅ローンを組みました。月々の返済額は22万2,975円です。

 

同僚からは、「きれいな奥さんに、明るく礼儀正しい息子さん。そのうえ新築の戸建てなんて、これ以上ない幸せだよなあ」とうらやむ声。それには田中さん自身もまんざらではありません。

 

そんな誰もが羨む幸せな日々を送っていた田中夫妻でしたが、数年後、予想もしなかった出来事が起こります。

こんなことになるなんて誰が想像したよ…田中さん「悔し涙」のワケ

マイホームを買ってから5年後のこと。田中夫妻はなんと2人目の子を授かりました。

 

おめでたい出来事には違いありませんが、産休・育休による収入減少と支出増が田中家の家計に重くのしかかっていきます。

 

さらに田中さんが50歳を迎えたタイミングでもう1つ衝撃的な出来事が。

 

ある日の夕食後、リビングでくつろいでいると妻から声をかけられました。

 

「ねえ、いま時間いい? 親が自宅で転倒したらしくて」

 

「ええっ!? お義母さん、大丈夫なのか?」

 

「いや、命に別状はないのよ。でも、介護が必要になるかもしれなくて……。でもほら、うち関西でしょ? 通うのも大変だし、いまの仕事続けられないかもなって思ってて……」

 

ローン残債は5,000万円を切ったとはいえ、完済まではまだまだ果てしない道のりです。ひとたび妻の収入が途絶えれば、家計がさらに苦しくなることは明白でした。

 

「ごめんなぁ。本当は今すぐ辞めてお義母さんのところへ行きなって言いたいよ。でも、俺の稼ぎだけじゃ子どもたちを養ってやれないかもしれない。大黒柱なのに、惨めだよなぁ……本当にすまない」

 

マイホーム購入から約11年。田中さんは思い描いていた未来とかけ離れた苦しい現実と、この状況を打開する方法が浮かばない自分への不甲斐なさに思わず悔し涙を流しました。

 

とはいえ、落ち込んでいるばかりではなにも変わりません。冷静さを取り戻した田中さんは、今後の家計のやりくりについて専門家の意見を参考にするため、ファイナンシャルプランナー(FP)のもとを訪ねました。