アジア通貨危機(1997年)の例
1997年にタイのバーツ暴落を発端として発生したアジア通貨危機では、東南アジア諸国の通貨が急落し、地域全体の経済が不安定化しました。多くの企業が倒産し、銀行も経営破綻に追い込まれました。この危機により、地域内外での経済不安が高まりました。
意外なことに、アジア通貨危機の際には、金の価格は下落しました。この理由は、危機がアジア地域に集中していたため、グローバルな資金が金ではなく、アメリカのドル資産に流れたためです。また、アジア諸国が保有していた金を売却して通貨を防衛したことも、金価格の下落に寄与しました。
よりくわしく説明します。アジア通貨危機は、1997年にタイのバーツが急落したことを発端に、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピンなど、アジア各国の通貨がつぎつぎに大幅な価値下落を経験したものです。
これらの国々は、通貨を防衛するために中央銀行の外貨準備を用いて自国通貨を買い支えようとしましたが、外貨準備が不足し、効果的な防衛が難しくなりました。
そのため、いくつかの国では、外貨準備を補うために保有していた金を売却する動きが出ました。とくに、金は流動性が高く、迅速に現金化できる資産であるため、通貨防衛のために売却されやすかったのです。この大量の金の売却は、国際市場における金供給の増加をもたらし、金価格に下落圧力をかけました。
また、アジア通貨危機の間、投資家や企業はアジア地域の通貨の信頼性が低下するなかで、より安定した資産に資金を移す必要に迫られました。このとき、多くの投資家は、金ではなく、米ドルやアメリカ債に資金を移動させました。
米ドルは、世界的に信頼される通貨であり、とくにアジア地域での混乱が続くなか、最も安全な避難先とみなされました。
米ドルが強くなる(価値が高まる)と、ドル建ての金の価格が下落する傾向があります。これは、金の国際市場での取引が主に米ドル建てで行われるためです。通貨危機の影響でドルの価値が高まるなか、金の価格は相対的に下落しました。
この時、多くの投資家が金ではなく米ドルを資産の逃避先に選んだのは、アジア諸国の金売却による当時の金価格下落の流れのなかで、米ドルが相対的により安全性の高い資産であるとみなされたためです。
アジア通貨危機は、金が「安全資産」として、必ずしもほかの資産クラスに対して優位と判断されるわけではないことを示した事例です。
しかし、現代ではアメリカ経済の不安定化や新興国の台頭、デジタル資産の普及、さらに地政学的リスクの増加など、さまざまな要因により、もはや米ドルが一強の地位にあるとはいえなくなっています。そのような状況のなか、普遍的な価値を持つ金が、資産の逃避先として改めて注目を集めているといえるでしょう。
菊地 温以
株式会社アプレ代表取締役
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