会社設立までの流れ
会社設立の流れは次のとおりです。
(1)事業計画を立てる
商号、事業目的、資本金額、役員構成を決定。
(2)定款を作成し認証を受ける
電子定款を利用してコストを削減。
(3)資本金を払い込む
発起人名義の口座に振り込み、記録を保管。
(4)設立登記を申請する
必要書類を揃え法務局で登記を完了。
(5)税務・保険の手続きを行う
税務署や年金事務所、労働基準監督署で必要な届出を行う。
それでは、上記(1)~(5)を簡単に見ていきましょう。
(1)設立の第一歩:基本事項の決定
株式会社設立の準備段階では、次に挙げる基本事項を決定する必要があります。このステップを明確にすることで、その後の手続きがスムーズに進みます。
【会社名(商号)】
会社の名前は事業の顔となります。特に注意すべき点は次のとおりです。
・他の会社と同一商号がないか事前に法務局やインターネットで確認。
・使用する文字や記号の制限にも留意(日本語や英数字、一部の記号の使用が可能)。
【事業目的】
事業目的は、現在の事業内容に加え、将来の拡大を見据えて幅広く設定するのが一般的です。
・具体的かつ合法的な表現で記載する必要があります。
・範囲が狭すぎると、新たな事業を始める際に定款変更が必要になることも。
・しかし範囲が広すぎてもデメリットがあるため、何をやっているか客観的にわかるよう、記載に工夫が必要です。
【資本金の額】
資本金は会社の信用を左右する重要な要素です。
・最低1円から設立可能ですが、一般的には数十万円から数百万円程度が設定されます。
・銀行口座開設や取引先の信頼を考えると適切な額を設定することが重要です。
・また、許認可との絡みで資本金の最低額が決まっていることもあるため要確認。
【本店所在地】
登記上の住所を決めます。次のポイントを確認しましょう。
・事務所や店舗、自宅でも登記可能。ただし、自宅の場合はプライバシー保護の観点から注意が必要です。
・レンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用することも検討されます。
【役員構成】
設立時には取締役が最低1名必要です。
・取締役会を設置する場合は3名以上が必要。
・監査役を置く場合は、任期や役割を事前に整理しておきましょう。
(2)定款の作成と認証:会社のルールを整える
定款は、会社の基本ルールを定めた最重要書類です。これがなければ会社設立は始まりません。
〈定款に記載すべき事項(絶対的記載事項)〉
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名または名称および住所
●電子定款の活用
定款を紙で作成する場合、収入印紙代(4万円)がかかります。しかし電子定款を利用すればこの費用を削減できますので、電子定款をおすすめします。
●公証役場での認証
株式会社を設立する場合、作成した定款は、公証役場で認証を受ける必要があります。合同会社の場合は定款認証が不要です。
(3)資本金払込:会社の経済基盤を築く
(株式会社の場合)定款認証後、発起人の個人口座に資本金を振り込みます。この手続きが完了すれば、資本金の払い込みが証明され、設立登記が可能になります。
・資本金は「発起人名義の個人口座」に振り込みます。法人名義の口座はまだ開設できないためご注意ください。
・振込証明として、通帳のコピーや振込明細書を保存しておきましょう。
(4)設立登記:会社が正式に誕生する瞬間
設立登記は、法務局で行う手続きです。この登記をすることで、会社として正式に活動を開始できます。
〈必要書類〉
・定款
・設立登記申請書
・資本金払込証明書
・取締役就任承諾書
・印鑑届出書(会社の実印登録)
●登録免許税
登記時には登録免許税が発生します。計算方法は次のとおりです。
・株式会社 最低額:15万円/合同会社 最低額:6万円
・または「資本金額×0.7%」の高いほうが適用されます。
(5)会社設立後の届出:忘れてはならない重要手続き
会社設立後には、税務署や年金事務所などへの届出が必要です。これらを忘れるとペナルティが発生する可能性もあるため注意しましょう。
〈税務署での手続き〉
・法人設立届出書
・青色申告承認申請書
・給与支払事務所等の開設届出書(役員や従業員に給与を支払う場合)
〈社会保険や労働保険の加入〉
・年金事務所:健康保険と厚生年金の加入手続き
・労働基準監督署:労災保険の加入手続き
・ハローワーク:雇用保険の加入手続き
これらの手続きは速やかに行う必要があり、特に税務署への青色申告承認申請書は設立から2ヵ月以内が期限となります。
設立をスムーズに進めるためのヒント
●専門家の活用
会社設立は法的な知識が求められる場面が多く、初めての方には煩雑です。司法書士に依頼することで、スムーズかつ正確な手続きが可能になります。
●スケジュール管理
設立後の届出には期限があるものも多いため、事前にスケジュールを立てておくことが重要です。
●定款の内容を慎重に確認
事業内容や将来の事業展開を見据え、必要に応じた柔軟な内容を盛り込むことが重要です。
設立にかかるコスト
会社設立には一定の費用が発生します。主なコストをまとめました。
1.登録免許税
・株式会社:15万円または「資本金×0.7%」のいずれか高いほう。
・合同会社:6万円。
2.定款認証費用
・株式会社:1.5万円~ ※資本金額等に応じて変動(公証役場での認証)。
・合同会社:不要。
3.印紙税
・紙の定款の場合:4万円。
・電子定款の場合:印紙税は不要。
4.印鑑作成費用
・実印、銀行印、角印の作成費用:約5,000円~2万円程度
5.専門家への報酬(オプション)
・司法書士に依頼する場合:5万~15万円程度。
許認可が必要な業種と許認可手続きの種類
業種によっては、会社設立後に所轄官庁から必要な許可を取得したり、登録や届出を済ませたりする義務があります。これらを怠ったまま営業を開始すると、法律違反として罰則を受ける可能性があります。予定している事業が許認可を要するものかどうかを事前にしっかり確認し、営業開始前に必要な手続きを確実に済ませておきましょう。
ここからは、許認可が必要な主な業種と、手続きの種類や具体的な流れについて詳しく解説します。
許認可が必要な業種とは?
許認可が必要な業種は、社会的に影響の大きい分野や、特定の資格や条件が求められる業種が中心です。代表的な業種とその詳細を見ていきましょう。
1.飲食業
・必要な許認可:「飲食店営業許可」
・申請先:地域の保健所
・要件:
-営業施設が食品衛生法に基づく基準を満たしていること。
-食品衛生責任者の資格を有する者を設置していること。
・補足:新規店舗だけでなく、既存店舗の改装やメニュー変更でも再許可が必要になる場合があります。
2.建設業
・必要な許認可:「建設業許可」
・申請先:都道府県または国土交通省
・要件:
-経営業務管理責任者の設置。
-財務基盤が一定の基準を満たしていること。
-建設業法で定められた技術者の配置。
3.不動産業
・必要な許認可:「宅地建物取引業免許」
・申請先:都道府県または国土交通省
・要件:
-専任の宅地建物取引士を設置。
-保証金の供託または保証協会への加入。
4.医療・福祉業
・必要な許認可:「医療法」「介護保険法」に基づく許認可
・申請先:厚生労働省や都道府県
・要件:
-医師、看護師、介護福祉士などの有資格者の配置。
-施設が基準を満たしていること。
・補足:訪問介護やデイサービスなどのサービス形態によって要件が異なります。
5.運送業
・必要な許認可:「一般貨物自動車運送事業許可」
・申請先:国土交通省
・要件:
-営業所や車庫が法令基準を満たしていること。
-運行管理者や整備管理者の設置。
許認可手続きの種類
許認可は、その内容によって次の3つに分類されます。それぞれの特性を理解し、自分の事業に必要な手続きを把握しましょう。
1.許可
・概要:基準を満たさなければ取得できないもの。
・例:飲食店営業許可、建設業許可、運送業許可。
・特徴:書類審査だけでなく、現地調査が行われる場合もあります。
2.登録
・概要:事業を始める前に行政機関に登録する必要があるもの。
・例:旅行業登録、金融業登録。
・特徴:一定の条件をクリアすれば登録可能
3.届出
・概要:行政に事業開始を届け出ることで認められるもの。
・例:倉庫業届出、飲食店営業届出。
・特徴:許可や登録よりも要件が緩やかで、手続きも簡便です。
許認可取得の流れ
許認可を取得するための基本的な流れは次のとおりです。
(1)必要な許認可を確認する
(2)要件を確認・整備する
(3)必要書類を準備する
(4)行政機関に申請
(5)許認可取得後の届出や更新
許認可手続きには、申請から取得まで数週間から数ヵ月を要する場合があります。事業開始のスケジュールを考慮し、早めに準備を進めましょう。また、許認可の要件や手続きは法改正によって変更されることがあります。最新情報を常に確認し、適切な対応を心がけましょう。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士