会社員が給与アップを実現するための選択肢。最も身近なものといえるのが昇進です。会社内のランクが上がるごとに給与はうなぎのぼり……ただ、行き着く先に落胆するケースも珍しくないようです。
年収1,000万円なんてこんなもん…42歳で部長に抜擢の〈大企業エリート〉。質素すぎる毎日に、部下「夢がない」「このままこの会社にいても」と絶望 写真はイメージです/PIXTA

異例の出世を果たした42歳・大企業部長の「あまりに夢のない話」

前述のとおり、サラリーマンにとって昇進は給与アップを目指すひとつの方法。

 

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大卒サラリーマンの係長級は平均年齢44.2歳で、年収は674.4万円。課長級の平均年齢は48.6歳で、年収は877.82万円。部長級の平均年齢は52.6歳で、年収は1,053.1万円。部長にまで昇進すれば、年収は1,000万円の大台にのります。さらに企業規模別にみていくと、従業員1,000人以上の大企業であれば、30代後半の課長級で年収は1,037.0万円と大台超え。なんとも夢が広がります。

 

そんな出世・昇進にまつわる話をしてくれた、都内大手メーカー勤務の佐々木大輔さん(仮名・31歳)。憧れの先輩の課長が42歳の若さで部長に昇進したときのエピソード。その会社では、40代前半での部長昇進は異例中の異例だったとか。

 

――先輩のようになりたい

 

そんな憧れを口にしていましたが、詳しく話を聞いたところ、「まったく夢がない」「このままこの会社にいても……」と、軽い絶望を味わったとか。それは部長に昇進したあとの給与について、こっそりと教えてくれたときのこと。

 

――部長に昇進して、やっぱり給与は大台突破っすか?

 

お酒が進んでいたこともあり、無邪気に聞いてしまうという大失態。すると先輩もお酒が入っていたからか、詳細を教えてくれたといいます。42歳大企業部長の給与は以下の通り。

 

【42歳大企業部長の給与】

■年収(額面):11,800,000円、年収(手取り):8,095,920円

■月収(額面):650,000円、月収(手取り):445,962円

(月収天引き内訳)

・所得税:60,263円

・住民税:41,986円

・健康保険:32,500円

・厚生年金:59,475円

・介護保険:5,915円

・雇用保険:3,900円

 

年収は大台突破でも、手取りは800万円程度。やはり結構天引きされます。さらに住宅ローンの返済は毎月20万円程度。さらに最近は2人いる子どもの教育費などもかさばり、夫婦共働きで家計を支えています。

 

――うちは小遣い制で月5万円。会社では何かとお金を出す側だから、とても月5万円じゃやっていけない。毎日ランチは自作弁当。外食に出ているやつらが羨ましいよ

――週末は家事と子育てで終わる。自分の時間なんてないし、お金もないし

 

何とも質素・倹約な大企業部長。「まあ、年収1,000万円なんてこんなもんだよ」と達観したように話す先輩が印象的だったといいます。

 

――もっと毎週末にはゴルフにいったりとか、贅沢をしているかと思ってました

 

と佐々木さんがいうと、「うちの会社じゃ、役員にでもならないと無理だろ」と一蹴されたといいます。

 

――世の中の部長なんて、こんなもんだと思うよ。シングルなら話は違うかもしれないが

 

第一生命保険株式会社が行った『第35回 大人になったらなりたいもののアンケート調査』によると、小学生・中学生・高校生のなりたい職業のトップは、小学生女子を除いてすべて「会社員」。そんな子どもたちに対し、42歳大企業部長の現実は、あまりに夢のない話だったかもしれません。

 

[参考資料]

株式会社マイナビ『マイナビ ライフキャリア実態調査2024年(働き方・キャリア編)』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

第一生命保険株式会社『第35回 大人になったらなりたいもののアンケート調査』