(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●25bpの利下げは予想通り、声明は若干修正もパウエル議長は政策的なシグナルではないと明言。

●パウエル議長は今後も会合ごとに政策を決定するとし、今は中立金利に向けた利下げ過程と説明。

●FF金利の予想最終到達点を引き上げ、今後は下院選の結果などを注視しつつ見通しを検討へ。

25bpの利下げは予想通り、声明は若干修正もパウエル議長は政策的なシグナルではないと明言

米連邦準備制度理事会(FRB)は、11月6日、7日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を25ベーシスポイント(bp、1bp=001%)引き下げ、4.50%~4.75%とすることを決定しました。前回9月の会合に続く利下げとなりましたが、市場には織り込み済みでした。以下、FOMC声明とパウエル議長の発言のポイントを整理し、今後の金融政策の見通しについて考えます。

 

まず、FOMC声明では、雇用やインフレに関する表記に若干の修正がみられましたが(図表1)、パウエル議長はFOMC後の記者会見で、この修正について、政策的なシグナルを送るものではないと説明しました。また、声明で修正された箇所は、前回9月に利下げ開始を決定した背景の説明であることも踏まえると、今回は2回目の利下げということで、単に削除されたと推測されます。

 

[図表1]11月FOMC声明の修正点

パウエル議長は今後も会合ごとに政策を決定するとし、今は中立金利に向けた利下げ過程と説明

次に、パウエル議長の記者会見における発言をみていきます。パウエル議長は会見の冒頭で、「FF金利の調整を検討するにあたっては、入手するデータや、変化し続ける経済見通し、リスクのバランスを慎重に考慮する」とし、「我々はあらかじめ定めた路線を進んでいるわけではない」、「今後も会合ごとに政策決定を行っていく」という、従来の見解を繰り返し述べました(図表2)。

 

[図表2]記者会見でのパウエル議長の主な発言骨子

 

質疑応答では、12月に利下げを一時停止する可能性があるとしたら、どのような理由が考えられるかという質問に対し、「現時点で、そのような決定はまったくしていない」との考えを示しました。また、来年の利上げはないと断言できるかとの質問には、「それほど遠い先のことについては何も言いきれない。しかし、利上げは我々の計画には含まれていない」と述べ、今は中立金利に向けて金利を引き下げていく過程にあることを説明しました。

FF金利の予想最終到達点を引き上げ、今後は下院選の結果などを注視しつつ見通しを検討へ

結局、今回は先行きの利下げに関する明確な手掛かりは示されませんでしたが、米大統領選でトランプ氏が勝利した直後であり、どのような経済政策が打ち出されるのかもまだ明確ではない状況を踏まえると、当然のように思われます。なお、弊社は米金融政策について、25bpの利下げが年内は12月、来年は3月、6月、9月、12月に、それぞれ行われるとの見方は不変ですが、FF金利の予想最終到達点を2.875%から3.375%に引き上げました。

 

なお、トランプ氏の景気刺激的な政策は、弊社の2025年および2026年の、実質GDP成長率予想と物価上昇率予想の上方修正要因であり、金融政策の見通しにも影響すると考えています。ただ、現時点で下院選の結果が判明しておらず、「トリプルレッド」か「ねじれ議会」かで、トランプ氏の政策の実現度が大きく変わるため、目先は下院選の結果とトランプ氏の動向を注視し、見通しを検討していくことになります。

 

(2024年11月8日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米大統領選後の「金融政策」の見通し ~2024年11月FOMCレビュー【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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