高齢化、長寿化が進むなか、定年以降も働き続けることがいまやスタンダード。それでの経験を現役社員に還元……そんなシナリオがうまくいくとは限らないようです。
申し訳ありません、お客様!最高月収150万円「大企業のエリート部長だった66歳男性」、ミス連発で平謝りでも「時給1,180円の居酒屋バイト」を続けるワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

最高月収150万円のエリートが居酒屋バイトを始めるまで

最高月収150万円の元エリートが、居酒屋バイトを始めた理由。それは会社を辞めることを決心したときにさかのぼります。

――定年後、「特別職」で「アドバイザー」という立場でしたが、ランクとしては上司がいて、私はその部下。お互い遠慮し合い、やりにくさがありました

――最近、シニア社員のモチベーションを保つために、給与水準はほぼ据え置きになりました。私の場合、役職定年を迎えた段階で4割ほど、給与は減ったのですが、それでも年齢的に高給。60歳以降も基本、その給与水準でした。給与は部下である私のほうがはるかに上……そんな年下の上司もいたかもしれない

サイボウズ チームワーク総研が年下の上司と年上の部下を対象に行った『年上の部下へのマネジメント」に関する意識調査』によると、年下上司も年上部下も、25%ほどが仕事のやりにくさを訴えています。「自分が年下の上司で苦労したこと」として、

・経験が部下のほうおが豊富だから、指示が難しいと思うことがある

・ミーティングやカジュアルな集まりなどで、皆が変に気をつかう

などの意見が聞かれました。

居心地の悪さを感じているなか決定的だったのは、どこからか聞こえてきた「はやく辞めてくれないかな」という本音といえる声。

――求められることも多くありましたが、邪魔に感じる社員がいたことも事実

――会社に残ることで、少しでも嫌な思いをしている社員がいるなら、辞めたほうがお互いのため

そう考え、会社を去ることを決意したという川中さん。毎日が日曜日の生活がスタート……しかし、それまで家庭を顧みず仕事優先で生きてきた川中さん。どこか妻と2人きりの空間に居心地の悪さを感じ、「何でもいいから仕事をしよう」と思い付いたのだとか。「せっかくするなら、未経験の仕事がいいな」と考えながら、ネット検索して見つけたのが、最寄り駅にある居酒屋のアルバイトだったといいます。

――我ながら大胆な選択だったと思うんです。親子以上に離れた子たちと働くなんて。ただここでは変に気を遣われることはありません。ミスばかりするので、怒られてばかりです

あまりにミスばかりするものだから、先輩バイトからは怒られ、迷惑をかけた客には「すみません!」と謝ってばかりだとか。ただ再び仕事の楽しさを感じることができ、妻とも程よい距離感が生まれ家庭の雰囲気もよくなったといいことばかり。「キッチンにも入ってみたいですね」と新たな挑戦も考えているといいます。