福沢諭吉を踏襲?慶應塾長の提言の背景
――ちょっと前の話ですが、中央教育審議会の特別部会で慶應塾長の伊藤公平さんが「国公立大の学費を年150万円に上げるべきだ」と提言して物議を醸しました。しかし、尾原さんの『「反・東大」の思想史』第一章を読むと福沢諭吉が似たような主旨のことを言っているのに驚きました。
尾原:明治日本がいち早く近代化を達成するためには、急速に人材を育てる必要がありました。そこで、東大などの国立学校を設け、多額の国費を投入したわけです。しかし、日本には慶應義塾をはじめとする私学がすでに存在していました。政府には、多様な私学の成長を支援するという選択肢もあり得ましたが、それは非常に時間のかかることです。結局、政府は自前で強大な国立学校を作ることを選びました。
結果として、東大をはじめとする国立学校は安い学費で充実した教育を提供し、人材が集中し、私学の発展は阻害されました。多様な学校が自由に競争し成長することを是とする福沢は、「民業圧迫」によって教育をモノトーンにした政府と国立学校を激しく批判します。そういう歴史を踏まえた上で、伊藤塾長はあのように言われたのだと思います。
最初に申し上げた通り、「
尾原 宏之
甲南大学法学部
教授
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】