大手建設会社勤務のサラリーマン、部長への昇進を喜んでいたが…
給与があがれば、当然仕事のやりがいもアップするし、家族も喜んでくれる――サラリーマンであれば誰もが思っていること。ただ昇給が幸せとは限らないというケースも。大手建設会社で働く山田健一さん(仮名・52歳)も、そんなひとりです。
山田さん、2歳下の妻と結婚したのは25年前。当時妻は大学院に通っていましたが、卒業と同時に妊娠が発覚。そこで結婚に至ったといいます。その後一男一女をもうけ、今年下の子が大学を卒業。子育て終了と共に、課長職から部長職への昇進も決まったといいます。
課長職だったころの給与は月収で60万円程度。それが昇進により月75万円ほどに昇給したそう。大手でも部長にまでのぼり詰めるのはひと握り。仕事を優先し、家庭を顧みないところもあったと反省するところはあるといいますが、それも専業主婦の妻が家庭をちゃんと守ってくれたおかげ。山田さん、感謝の気持ちでいっぱいだといいます。
しかし部長に昇進し小躍りして喜んでいるのは、山田さん本人だけだったといいます。
それは突然のことでした。ある日、テーブルに置かれた一枚の紙と指輪。その紙は離婚届だったといいます。テレビドラマでみたことのある光景が目の前に……よもやよもやのことに、思わず悲鳴をあげてしまったという山田さん。「悪い冗談だろ」「何かの間違いでは」と思ったものの、妻は本気でした。
実は5年前から山田さんの母、妻にとっては義母は認知症を患い在宅介護。主に面倒をみていたのは山田さんの妻でした。山田さんは長男で、親戚のなかにも「長男の嫁が親の介護をすべき」という考えがありました。それを察してか、特に頼んだわけでもありませんが山田さんの妻が率先して母(義母)の介護にあたってくれたといいます。そして今年の初め、母(義母)は亡くなり、子どもたちは全員社会人に。妻は介護と子育てから解放されます。
――わたしの役目はすべて終わりました
――お義母さんが亡くなり、子育ても終わって、ふと思ったの「ずいぶんと、狭い世界で生きてきたな」と
――大学院を卒業したあと、すぐに結婚するつもりはなかったの。この年齢になったけど、その続きを始めたいの
ひと通り聞いたあと、「それは離婚しなくてもできることでは?」と山田さんは反論。それに対し妻は「あと、もうあなたのお守りはしたくない」とひと言。山田さん、家庭を顧みなかったことをどんなに謝っても、妻の意志は固かったといいます。
昇進・昇給を引きかけに「仕事と家庭の両立」を犠牲にしてきた山田さん。あとは自身の判を押すだけの離婚届だけが残されました。
[参考資料]