近年、タワーマンションが全国に続々と建設されています。タワーマンションが激増する地方都市として、いま、岐阜市が話題になっていることをご存じでしょうか。本記事ではFさんの事例とともに、地方のタワーマンションについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
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タワーマンション激増の岐阜駅前

タワーマンションが激増する地方都市として、いま、岐阜市が話題になっています。

 

2007年に43階建ての「岐阜シティ・タワー43」が建設され、2012年には37階建ての「岐阜スカイウイング37」、2019年には24階建ての「岐阜イーストライジング24」と増えていきました。さらに岐阜駅北口方面の旧繊維問屋街の再開発として、「岐阜駅北中央東地区・中央西地区市街地再開発事業(仮称)」が進行中です。2028年に完成すれば駅前に34階建てのタワーマンションが二棟、ツインタワーとしてそびえ立つことになります。県庁所在地のメインの駅前が住宅地になってしまう状態です。

 

なぜ岐阜駅前にタワーマンションが増えているのでしょうか。

 

岐阜市の人口は2024年9月時点で39万9,235人です。これは全国の県庁所在地の人口ランキングで24位であり、長崎市とほぼ同じ規模。決して小さな自治体ではありませんが、人口は減少しています。1985年の約41万1,743人をピークに減少しつづけ40万人を切っています。岐阜県全体では今後、全国のペースをはるかに超えるスピードで減少し続け、30年後には50万人減ると予想されています。現在の岐阜市以上の人口が消滅するのです。

 

このような日本の人口減少を象徴するような地方都市でタワーマンションが増える理由は、主にその立地だとされています。JR岐阜駅はJR名古屋駅まで東海道本線の快速であれば23分(480円)という距離感です。駅前に住んでいれば名古屋までは比較的ストレスがなく電車で通勤ができるでしょう。また、名鉄岐阜駅も近くにあり、非常に移動には便利な場所といえます。そのため岐阜駅前のタワーマンションは、名古屋までの通勤者を想定しているものと考えられます。

 

岐阜駅前のタワーマンションは名古屋市のそれと比べて、新築時も価格が安いことも魅力です。2,000万円台から存在し、3LDKでも6,000万円程度と、タワーマンションという名前から想像する価格とはかけ離れています。名古屋市都心にある新築タワーマンションで3LDKであれば、1億円以上であることから、岐阜市の場合は一般的な会社員世帯でも十分手が届くはずです。

 

名古屋市への通勤に便利で、価格も手ごろ、駅前の再開発にも役に立っている、そのような理由から岐阜駅前のタワーマンションが盛り上がっているものと思われます。しかしこれを手放しで喜べるものでしょうか。

 

タワーマンションが地方の駅前再生の起爆剤になるのは最初だけで、いずれ街を荒廃させる原因になりかねません。同時に区分所有者の資産価値も決して上がることはなく、負の遺産となってしまうかもしれません。岐阜駅前のタワーマンションの増加にはいくつかのリスクがあると思われます。

 

・将来の岐阜駅前が荒廃する
・マンションが廃墟・スラムと化す
・区分所有者の資産価値が下がっていく
・子供、孫世代への負の遺産を相続することになる

 

これらのリスクは、タワーマンションに本来求められる機能・あり方と乖離していることが原因です。