近年、タワーマンションが全国に続々と建設されています。タワーマンションが激増する地方都市として、いま、岐阜市が話題になっていることをご存じでしょうか。本記事ではFさんの事例とともに、地方のタワーマンションについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
「岐阜」でタワマンバブルも…父は大手自動車メーカー勤務、世帯収入1,000万円の「パワーカップル」29歳・公務員夫が絶望したワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「僕たちパワーカップルだよね?」流行りの言葉に踊らされるアラサー夫

夫Fさん 29歳 地方公務員 年収420万円

妻Kさん 29歳 地方公務員(看護師) 年収550万円

子供なし

預貯金 550万円

 

FさんとKさんは、岐阜市内に住む公務員夫婦です。世帯年収は970万円。今後の昇給を考えると来年にも世帯年収は1,000万円を超えるでしょう。

 

夫Fさんは岐阜市内から名古屋市まで通勤しています。電車に乗るのはあまり好きではないことと、岐阜駅まで行くのが億劫な場所に住んでいるため自家用車での通勤です。妻Kさんは岐阜市郊外の出身です。看護師として勤める病院が岐阜市内にあるため新卒時に引っ越しました。愛知県豊田市生まれの夫Fさんは結婚を機に岐阜市に転居。2人は現在、岐阜市内の賃貸物件に住んでいます。

 

最近の関心ごとはマイホームです。妻Kさんは岐阜市内に戸建ての注文住宅が欲しいと思っています。80坪くらいの土地、延床面積40坪くらいの二階建ての建物をイメージしているようです。妻Kさんが考える予算は、土地、諸経費込みで5,500万円程度。ペアローンであれば借り入れは可能と考えています。

 

一方、夫Fさんの要望はまったく違います。駅前に建設が予定されているタワーマンションが欲しいと思っているのです。Fさんは父親が大手自動車メーカーの社員であったことから、幼少期から社宅で育ちました。そのため、土地付きの戸建てにはこだわりがありません。それに、夫Fさんは妻が呆れるほどの見栄っ張りなのです。

 

「僕たち、パワーカップルだよね? 戸建てよりタワーマンションがいいよ」と夫Fさんが言います。

 

妻Kさんはそれを聞くたびにため息が出ます。流行り言葉をすぐに使いたがり、Instagramを見ては洋服や靴を欲しがり、他人からの目線をとにかく気にする夫Fさんは日ごろから無計画な浪費が止まりません。父親が大手自動車メーカーに勤務しているにもかかわらず、乗っているのは7年ローン・頭金なしで購入した高級ドイツ車です。腕時計は妻Kさんですら知っているブランド「ロレックス」。

 

「そんな時計と車で通勤して、職場の人はどう思っているの? 公務員でしょ……?」と妻Kさんは心配しますが、夫Fさんは気にしていない様子。同級生はどの企業に勤めて年収はいくらだとか、同僚がなんの車を買ったとか、そういう話ばかりをするのが、妻Kさんにとっては苦痛です。夫の分不相応な浪費のせいで、家の貯蓄は550万円しかありません。それも妻が貯めたものであって、夫は貯蓄ゼロ、借金は総額800万円近くもあります。そんな夫Fさんですから、タワーマンションが欲しいと話すのを聞くと妻Kさんは鳥肌が立つほどの嫌悪感を覚えることもあります。

 

「なぜタワマンなの? またいつもの見栄でしょ?」そう妻Kさんが言うと、夫Fさんは反論します。

 

「タワーマンションは資産価値があるの知らないの? 将来は買った値段よりも高く売れるんだよ。買えるのは富裕層とパワーカップルだけだから治安もいいよ」と夫。

 

「まるで岐阜の治安が悪いかのように言うけど、いつ危ない目に遭ったの。それに我が家は富裕層でもパワーカップルでもなく公務員です。資産価値で家を買うつもりもないし。一度買ったら老後まで住みたい」そう妻が反論します。

 

雲を掴むかのような実体のない話を繰り返す夫と議論をすると、妻Kさんはストレスでめまいがします。そこでファイナンシャルプランナーに相談して判断を仰ぐことにしました。