不動産投資における「デッドクロス」という言葉をご存知でしょうか。デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態を指します。この状態になると、帳簿上の利益が増加し、所得税額が増えるため、資金繰りが悪化する可能性があります。本コラムでは、デッドクロスの発生原因やキャッシュフロー悪化につながるメカニズム、デッドクロスを避けるための物件購入前後の対策、キャッシュフローが悪化するリスクに対処する方法も解説します。デッドクロスを正しく理解し、不動産投資の成功に役立てましょう。

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デッドクロスを遅らせるためのポイント〜物件購入前〜

それでは、デッドクロスを遅らせるためにはどのようなことをしたらよいのでしょうか。デッドクロスを回避するポイントは物件購入の前後、どちらにもあります。まずは物件購入の前に気をつけるべき以下のポイントを解説します。

 

・自己資金を多く用意する
・減価償却期間が長い物件を選ぶ
・元金均等返済を選択する

 

自己資金を多く用意する

物件購入時に自己資金を多く用意することで、ローンの借入額を減らし、元金返済額を抑えることができます。毎月のローン返済額が少なくなり、デッドクロスの発生を遅らせることにより、その影響を軽減することができます。

 

自己資金を増やすことで、長期的な資金繰りの改善にもつながり、安定した不動産投資を行うための基盤を築くことができます。ただし、急な出費や修繕などに備え、ある程度の資金は残しておくことも必要です。バランスを見て検討しましょう。

 

減価償却期間が長い物件を選ぶ

新築や築浅の物件など、残存耐用年数が長い物件を選ぶこともデッドクロスを遅らせるための重要なポイントです。前述したとおり、デッドクロスの発生要因は減価償却費が計上できなくなることにあります。そのため、長期間にわたって減価償却費を計上できれば、デッドクロスの発生を遅らせることができます。

 

例えば、鉄筋コンクリート造の物件は木造に比べて耐用年数が長いため、減価償却費を長期間にわたって計上できます。ただし、減価償却期間が長くなると単年当たりの減価償却費は少なくなるため、短期的な節税効果は薄れる点には注意が必要です。

 

元金均等返済を選択する

前述したように、ローンの返済方法として元利均等返済と元金均等返済がありますが、元金均等返済を選択することも1つの方法です。この方法を選択すると、毎月の元金返済額は一定となるため、返済が進むにつれて元金返済の割合が増えていく元利均等返済よりもデッドクロス状態に陥りにくくなります。

 

ただし、すべての金融機関で元金均等返済を利用できるわけではありません。また、返済初期は元金の残高が多いため、利息部分も多くなり、ローンの負担が大きくなる点にも注意が必要です。元金返済を選択しても結果としてキャッシュフローが回らなければ意味がありません。

デッドクロスを遅らせるためのポイント〜物件購入後〜

デッドクロスを遅らせるためのポイントは物件を購入した後にも存在します。下記の方法を確認していきましょう。

 

・ローンの借り換えを検討する
・繰り上げ返済をする

 

ローンの借り換えを検討する

金利の低いローンへの借り換えや返済期間を伸ばすことで、毎月の返済額を軽減し、キャッシュフローを改善することができます。借り換えを検討する際は、現在の金利動向や自身の信用状況を考慮し、より有利な条件を探ることが重要です。

 

ただし、借り換えには諸費用がかかるため、長期的な視点でのシミュレーションが不可欠になります。金利だけでなく、返済期間や手数料なども含めた総合的な判断が必要です。例えば、金利が1%下がっても、諸費用が高額な場合は借り換えのメリットが相殺される可能性もあります。また、返済期間を伸ばすことによってキャッシュフローが改善しても、総返済額が増加する可能性もあるため、慎重な検討が求められます。

 

繰り上げ返済をする

余裕資金がある場合、繰り上げ返済は効果的な対策となります。特にローン返済の初期は利息部分の返済額が多いため、繰り上げ返済によって返済総額を大きく減らすことも可能になります。これにより、将来的なデッドクロスのリスクを軽減できます。

 

ただし、繰り上げ返済は余裕資金の範囲内で行うべきです。理由は、前述した自己資金の投入と同様で、急な出費や修繕のために必要な手元資金を残すことが重要だからです。金融機関によっては繰り上げ返済に事務手数料がかかる場合もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

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