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中間省略登記とは、複数人の間で不動産の所有権などが移転した場合に、中間者を省略して登記することをいいます。現在でもワンルームマンション投資などで一般的に行われている一方で、「違法ではないのか」「トラブルにならないか心配」といった声も多く聞かれます。本コラムでは、中間省略登記の意義や、新・中間省略登記との違い、過去の法改正・裁判例について分かりやすく解説します。

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中間省略登記とは?

(画像:PIXTA)
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中間省略登記とは、不動産登記において所有権などの物権が順次移動した場合に、中間者への登記手続きを一部省略し、最終取得者に直接登記を移転することをいいます。

 

例えば、土地の所有権がAからB、BからCへと順次移転する場合、本来であればA(売主)からB(売主・買主)への所有権移転登記、B(売主・買主)からC(買主)への所有権移転登記と、2段階の登記が必要です。

 

このように2段階の所有権移転登記を行う場合、手続きに時間がかかるだけではなく、登記に必要な登録免許税や司法書士など専門家に支払う手数料も2回分生じてしまいます。

 

そこで、中間者Bに関する登記を省略し、元の所有者A(売主)から最終取得者C(買主)へと直接所有権を移転させる登記手続きとして、中間省略登記が利用されるようになりました。

2005年の法改正により従来の中間省略登記は使えなくなった

中間省略登記の運用について理解するためには、これまでの法改正や裁判所の判断をしっかりと把握する必要があります。そこで以下からは、中間省略登記の沿革を分かりやすく解説します。

 

改正以前は中間省略登記が可能だった

本来、不動産登記は所有権の移転を正確に記録するための制度であり、旧不動産登記法においても中間省略登記は原則として禁止されていました。

 

しかし実務上は、裁判所がケースバイケースで有効性を判断するなど、柔軟な運用が行われていました。中間省略登記の有効性について争われた実際の裁判で、裁判所は次のように判断しています。

 

  • Aだけが中間省略登記に同意しているときは無効(最高裁昭和35年4月21日判決)
  • Bだけが同意しているときも無効(最高裁平成22年12月16日判決)
  • AとBのどちらも同意しているときは有効(最高裁昭和40年9月21日判決)

 

このように、取引の実態に即しており、関係者全員の合意が得られている場合には、中間省略登記が認められる余地がありました。

 

不動産登記法の改正により中間省略登記はできなくなった

ここまで紹介したように、これまで最高裁は原則として中間省略登記を否定しつつも、状況に応じて例外的に有効とする判断を下してきました。いわば、「形式的には禁止されているが実質的には可能である」という状況でした。

 

しかし登記制度の本来の目的は、権利を明確にして所有者等を保護するだけではなく、第三者にとっても安全な取引環境を提供することにあります。そのため、2005年に不動産登記法が改正され、登記申請時に「登記原因証明情報」の添付が義務づけられました。

 

(登記原因証明情報の提供)

第六十一条 権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。

 

出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp )

 

これにより、AからB、BからCへと所有権が移転した場合、それぞれの売買契約に基づく所有権移転登記の情報を添付しなければならず、AからCへの中間省略登記は事実上不可能となりました。改正後の制度では、たとえ当事者全員が合意していたとしても、中間省略登記は認められません。

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