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初期費用を抑えやすい不動産投資として、オーナーチェンジ物件が挙げられることがあります。一方で、「オーナーチェンジ物件は危険だ」という意見も少なくありません。本コラムでは、オーナーチェンジ物件の概要や、メリット・デメリットを詳しく解説します。また、オーナーチェンジ物件を購入する際に注意すべきポイントも紹介します。

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オーナーチェンジ物件とは?

(画像:PIXTA)
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オーナーチェンジ物件とは、中古のアパートや中古マンション(区分含む)、中古貸し店舗など全ての中古物件で、現在の賃借人が入居している状態のまま、物件の所有権が新しいオーナーに移転する不動産取引の形態を指します。新築物件の売買や、賃借人が退去したタイミングでの中古物件の売買では、物件の購入後に賃借人の募集を行いますが、オーナーチェンジ物件ではその必要はありません。

 

しかし、既存の賃貸借契約がそのまま引き継がれるため、新しいオーナーには一定の権利と義務が伴います。以下からは、オーナーチェンジ物件を購入する際に引き継がれる権利・義務の内容について詳しく解説します。

 

オーナーチェンジで引き継がれる権利

オーナーチェンジで引き継がれる権利

・賃料を請求する権利

・共益費・駐車場使用料などを請求する権利

・建物返還請求権

・原状回復を受ける権利

・契約更新時に賃料改定を提案する権利

 

オーナーチェンジ物件を購入すると、前オーナーが有していた賃貸借契約上のすべての権利が新オーナーに移転されます。具体的には、毎月の賃料や共益費、駐車場使用料などの収受権が含まれます。

 

また、契約更新時の更新料を受け取る権利や、賃料の値上げを請求する権利なども引き継ぎます。建物の明け渡しを求める権利や、退去時に原状回復を求める権利も新オーナーに帰属することになります。

 

これらの権利は法律で保護されており、賃借人との間で特別な合意がない限り、自動的に新オーナーに移転されます。

 

オーナーチェンジで引き継がれる義務

オーナーチェンジで引き継がれる義務

・建物を使用収益させる義務

・建物の修繕義務

・敷金の返還義務

・固定資産税など公租公課の支払い義務

 

オーナーチェンジ物件の購入では、権利だけでなく義務も新オーナーが引き継ぐことになります。最も重要な義務は、賃借人に対して建物を使用収益させる義務です。これは、新しいオーナーになったことを理由に、現在の入居者を退去させることができないということを意味しています。

 

また、建物の修繕義務も引き継ぎ、設備の故障や不具合が発生した場合は、新オーナーの責任で修繕を行う必要があります。

 

特に注意が必要なのが敷金の返還義務です。実際には前オーナーが受け取った敷金であっても、賃貸借契約が終了した際には、新オーナーが返還しなければなりません。

「オーナーチェンジ物件は危険」と言われる理由

以下からは、「オーナーチェンジ物件は危険」「オーナーチェンジ物件はやめておけ」と言われる理由やリスクについて解説します。

 

現在の契約内容を変更できない

オーナーチェンジ物件では、既存の賃貸借契約をそのまま引き継ぐ必要があり、新オーナーの意向で一方的に契約内容を変更することはできません。そのため、以下のような問題が発生する場合があります。

 

・サブリース契約も引き継がれる

・妥当な賃料設定とは限らない

・賃貸借契約の終了には立退料が必要となることも

 

特に賃料設定については大きなリスクとなります。例えば、現状の賃料が周辺相場より安い場合、収益性が見込めず投資としての採算が取れない可能性があります。また、相場より低いことにより長期間空室にならず、なかなか賃料の見直しを行えません。

 

逆に、賃料が高めに設定されている場合には、現在の賃借人が住み続ける限りは割高な賃料を得ることができますが、新しい賃借人を迎える際、以前と同額の賃料で契約を結べるとは限りません。

 

そのため、オーナーチェンジ物件を購入する場合であっても、不動産情報サイトを閲覧するなどして、現状の賃料が周辺賃料と比較し適正な水準であるかどうかを事前に検証し購入することが重要です。

 

また、オーナーの意向により一方的に賃貸借契約を終了させることもできません。やむを得ない事情により退去が必要な場合には、立ち退き料として賃料の6ヵ月〜12ヵ月分ほどを支払うことが慣習となっていますが、賃借人は立ち退きに応じる義務はありません。

 

元の契約がサブリース形態である場合には、新オーナーのもとでもサブリース契約が引き継がれます。

 

室内の状況や仕様を把握しづらい

オーナーチェンジ物件では、物件の内見が難しい場合が多く、室内の状況や仕様を正確に把握することが困難です。それによって以下のような問題点が生じます。

 

・室内の設備仕様を目視で確認できない

・予想外に室内が傷んでいる可能性がある

・リフォームを実施できない

・前オーナーへの瑕疵担保責任を追及できないことがある

 

入居者目線に立つと、物件探しの際に室内の設備仕様については当然気にする部分であり、本来であれば不動産投資の際にも目視で確認すべき部分ですが、オーナーチェンジ物件の場合にはすでに入居者がいるため、購入前に室内を確認できない場合があります。

 

また、予想外に物件が傷んでいたり、リフォームが必要な箇所があったりするリスクもあります。

 

さらに、不動産取引における瑕疵担保責任を追及できない場合もあります。瑕疵担保責任とは、物件の欠陥が発覚した際に買主である新オーナーが売主である前オーナーに責任を追及できる権利のことをいいます。通常、買主(新オーナー)は瑕疵に気づいてから1年以内であれば、売主(前オーナー)に対して、損害賠償あるいは契約解除を求めることができます。

 

しかし、契約によっては引渡し後2〜3ヵ月以内に限定されることも多く、オーナーチェンジ物件の場合にはその間に物件の室内確認ができるとは限らないので、瑕疵担保責任の追及ができる期間内に、物件の瑕疵を把握できず新オーナーが負担する可能性があります。

 

入居者の素性を把握しづらい

オーナーチェンジ物件では、入居者の素性を把握しづらく、以下のような問題点・懸念が生じます。

 

・入居者審査を再度行うことができない

・入居偽装の可能性がある

・入居者トラブルを抱えている可能性がある

 

オーナーチェンジ物件では、現在の入居者をそのまま居住させる必要があり、入居者審査を再度行うことはできません。そのため、前オーナーや不動産会社から提供された情報をもとに現入居者の情報を把握するしかなく、十分な把握ができない可能性があります。

 

また、件数としては少ないですが、悪質な不動産会社が介入している場合、会社による入居偽装が行われている可能性もあります。入居偽装とは、実際には入居者がいないにもかかわらず、あたかも現在入居中であるかのように見せかけ、先ほど紹介した瑕疵担保責任などの追及を逃れるために行われることがあります。

 

さらに、現入居者が騒音やゴミ出しなどのトラブル、悪質なクレームなどの問題を抱えている場合もあるため、できる限り調査を行うようにしましょう。

 

現地調査を行うことで異変や違和感に気づくことが出来るケースも多いため、必ず現地調査を行うことをおすすめします。

 

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