(※写真はイメージです/PIXTA)

大胆・緻密なストーリーで話題を読んだドラマ「地面師たち」はご存じでしょうか。このドラマは実話ではありませんが、実際に起きた地面師事件の要素が反映されているのではないかと言われています。本コラムでは、不動産投資の観点から、地面師詐欺の実例や手口、地面師に狙われる物件の特徴、詐欺被害を防ぐための具体的な対策について解説します。

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地面師とは?

(画像:PIXTA)
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地面師とは、他人の不動産の所有者を装って不動産を売却し、買主から売買代金を騙し取る詐欺師(またはその手口)のことをいいます。2024年には地面師の犯罪を描くドラマとして「地面師たち」がNetfliixにて配信され、大きな話題を呼びました。

 

詐欺の犯罪類型としては歴史が長く、古くは第二次世界大戦後の混乱に乗じて流行し、その後は高度経済成長期やバブル期に隆盛を極め、社会問題となりました。近年では、所有者が高齢化して管理が行き届いていない土地や、長期間放置された空き家・空き地が狙われるケースが多数報告されています。

地面師事件の実例と手口

実際に起きた地面師詐欺事件を2つ紹介します。ここで紹介する2つの事件はいずれも大企業が被害者となり、巨額の被害となった事件になります。

 

積水ハウス事件:被害額55億円5,900万円

2017年6月に発生した積水ハウス事件は、小説・ドラマ「地面師たち」のモデルとなったといわれている巨額詐欺事件であり、被害総額は55億5,900万円におよびました。

 

地面師グループの手口は、複数のメンバーが役割分担をして犯行を行い、ホログラムシールまで偽造したパスポートや印鑑証明書、さらには公正証書まで用意しており、本人確認ができる状態でした。もっとも、誕生日や干支を言い間違えるなど、不審な点があったことも報告されています。

 

事件当時は、景気回復や金融緩和を背景に都心のマンション用地が高騰しており、大手ディベロッパーによる取得競争が激化していました。地面師グループはこのことを利用し、積水ハウスに取引を急がせることで、冷静な判断を妨げるよう工夫していました。

 

結果として、地面師グループ15名が逮捕され、主犯格の男には懲役11年が言い渡されました。また、民事訴訟では主犯格の男らに10億円の賠償が命じられています。詐取された金銭のうち約15億円は国内で回収されたものの、約20億円が海外に流出したことが確認されており、残りの約20億円の行方は今も分かっていません。

 

アパホテル事件:被害額12億6,000万円

2013年に発生したアパホテル事件は、港区赤坂の土地取引に関する地面師詐欺事件であり、被害総額は約12億6,000万円におよびました。

 

地面師グループは、所有者が亡くなった駐車場に目をつけ、相続人になりすまして偽造書類(住民基本台帳カード、不動産権利書、固定資産評価証明書、印鑑証明書)を作成。アパホテルは精巧な偽造を見抜けず売買契約を締結し、売買代金を支払ってしまいました。

 

本件でも総勢9名にのぼる地面師グループ(司法書士を含む)が逮捕されていますが、被害の回復には至っていません。

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