(※写真はイメージです/PIXTA)

老老介護や介護離職といった事態を避けるため、老人ホームの利用者が増加する昨今。一方、その陰では安易な選択を「後悔」する人も増えているといいます。実際に介護施設での勤務経験もある株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、具体的な事例をもとに、高齢者施設選びの注意点を解説します。

介護施設もさまざま…状況に応じて「ベスト」は変わる

超高齢社会の日本では、介護問題や利用者の身体的・経済的な個別の状況に対応するため、昨今では下記のようにさまざまな種類の介護施設が存在します。

 

<老人ホームの種類>

  • 介護老人福祉施設(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院介護療養型医療施設
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 養護老人ホーム
  • 軽費老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅 など

 

それぞれの施設でかかる費用は、ざっくり分けると入居時に支払う「前払金(入居一時金)」と毎月支払う「月額利用料」の2つです。

 

有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など多くの老人ホームでは、一定期間の居住費(家賃)を入居一時金として前払いする仕組みがあり、立地や設備によって数十万円から数千万円まで幅があります。都市部や豪華な設備があるほど高額です。

 

月額利用料の主な内訳は、家賃や食費、管理費、介護サービス費、上乗せ介護費などです。管理費には、人件費、ホームの維持・運営費などが含まれています。

 

前払金(入居一時金)の支払い方法も“先々を見据えて”検討

1.居住費を一括して支払う「前払い方式」

2.居住費の前払いはせずに毎月支払う「月払い方式」

3.居住費の一部を前払いして残金を毎月支払う「併用方式(一部前払い方式)」

 

なお、入居一時金の支払い方法には、上記の3種類があります。

 

「前払い方式」では、家賃相当額である「前払金」を入居時に全額支払います。すでに終身分の居住費を支払っているため、居住期間が長くなっても追加で居住費を支払う必要はありません。ただし、入居時の負担が大きく、もし早期退去すると前払金の一部が返還されないことがあるので注意が必要です。

 

「月払い方式」は、前払い方式と比べて入居時にかかる初期費用を抑えることができます。家賃相当分の月額料金が割高に設定されていることがありますが、短期入居や途中退去がしやすい支払い方式です。長期間の入居となると将来的に支払う費用の負担が大きくなります。

 

「併用方式」は、前払金と月額利用料の両方をある程度抑えることができるので、まとまった初期費用が用意できないものの前払金が必要なホームに入居したい場合の選択肢となります。ただし、前払い方式と比べて総額が高めに設定されていることがあります。

 

今回のBさんのように、途中で退去することを想定する場合には月々の支払いは多くなりますが「月払い方式」を選択するといいでしょう。

 

注意したいのは、自宅を売って入居資金に充てる場合です。ホームに入居したけれど想像と違ったというケースはBさんのように少なからずあります。自宅を売ってしまうと戻りたくても戻ることができません。自宅を売却する場合は、入居後しばらく過ごしてホームとの相性を確かめてからのほうがいいでしょう。

 

また、支払い方式を途中で変更することは原則できません。現在の経済状況だけでなく、先々まで考慮したうえで選ぶことをおすすめします。

 

老人ホーム選びは「慎重に」

老人ホームなど前払金が発生する施設では、入居後90日以内であれば無条件で契約を解除できる「クーリングオフ制度(90日ルール)」があります。

 

この制度によって、契約から解約までの期間中に実際にかかった費用以外の前払金が返還されます。入居後に「こんなはずではなかった」と感じたら、我慢するより少しでも早く、90日以内に契約解除を判断しましょう。

 

今回のケースのように、後々後悔しないためにも、家族間での“腹を割った”話し合いが大切です。施設見学は家族だけでなく、入居する本人も一緒に見学し、「こんなはずではなかった」とならないようにしたいものです。

 

 

武田 拓也

株式会社FAMORE

代表取締役

 

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