人気衰えぬタワーマンション。需要が高いにもかかわらず、神戸市の中心部では、あえて新たな建設を規制する条例が可決されました。「廃棄物を作るに等しい」という神戸市長・久本喜造氏の強い言葉が話題を呼んでいます。本記事ではSさんの事例とともに、タワーマンションの未来について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
神戸市長「タワマンは将来の廃棄物」…市内JR駅前のタワマンを買う、年収920万円の40歳・気ままなおひとりさまに待ち受ける「絶望的未来」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

返済計画に無理はないが…

FPがSさんの将来の収支を計算してみると、定年退職まで現在の会社で勤務するとしたら、無理のない住宅購入計画だという答えでした。しかしひとつ懸念があると言います。

 

「定年退職後にマンションを売るという計画ですが、東京都心のタワーマンションと同列に考えていませんか?」とFP。

 

Sさんの住む政令指定都市は現在は人口が増えていますが、10年先、20年先は激減する予測が立てられています。Sさんも60代となると同時に住民の高齢化も進み、マンション価格も急激に下がるかもしれません。修繕積立金も将来果たして足りるのかどうかは不明です。タワーマンションの大規模修繕は工法やノウハウが確立されてなく、いくらかかるのかは現時点では不明なのです。

 

大規模修繕の前に売却しようと考えている区分所有者も少なくなくありません。築浅の美味しいところだけを味わって次の住まい方へと移行するのです。東京の都心にあり、管理体制が機能していればビンテージマンションとして資産価値を維持できるかもしれませんが、人口減の地方都市では難しいでしょう。タワーマンションの乱立によって街が壊れつつある場合はなおさらです。

 

「なるほど」とSさん「自動車でたとえると、20年前の高級輸入車が中古市場で値崩れをし、高校を卒業したばかりの子がろくな整備をしないで乗り回すことと似ていますね」。

 

「そうです。それを見て、新車時から丁寧に乗ってきたオーナーも手放してしまいますね。とてもよく似ています」FPは続けます。

 

「もし売却せず定年退職後も所有し続けたとしたらどうなるでしょうか。Sさんは未婚独身ですから相続する子供さんがいません。相続はどなたに行くでしょうか」

 

「おそらく弟の子供、姪か甥になると思います」

 

「どちらにお住まいですか?」

 

「東京の世田谷区です」

 

新幹線でなければ行けない遠い街にあるタワーマンション、しかも資産価値が崩れてしまった物件を相続してしまうと姪、甥には大変な負担となってしまいます。貸したとしても家賃を高く設定することはできず、税金などの負担も重くなります。さらにその子供の世代、Sさんの孫の世代では解体に直面します。人口が増えている街であれば建て替えによって容積率の特例を受け、さらに戸数を増やして住民負担を減らすスキームも現実的です。しかし人口が減る街であればそれも厳しいと思います。