不動産投資では多額の予算が必要となるため、抵当権を設定し融資を利用することが多いです。そこで本コラムでは、抵当権に関する基本的な知識や、質権などの他の担保との違い、設定方法などについて詳しく解説します。抵当権の特徴や注意点などを十分に理解し、不動産投資のリスクを抑えていきましょう。

抵当権を設定する方法|抵当権設定登記

不動産の購入から抵当権の設定にいたるまでの流れを簡単にまとめると、次のようになります。

 

  • 住宅ローン等の契約・保証委託契約
  • 抵当権設定契約
  • 所有権保存登記または所有権移転登記
  • 抵当権設定登記または抵当権移転登記
  • 登記事項証明書を取得し、抵当権者へ提出

 

新築物件を購入する場合には所有権保存登記、既存物件を購入する場合には所有権移転登記により、不動産所有者の名義変更を行います。所有権の登記と同時に抵当権の登記も行われることが一般的です。

 

抵当権の設定は、抵当権設定者、すなわち住宅ローン等の債務者側が登記を行うことが原則となっていますが、実務上は、債務者と債権者の両者から委任された司法書士が手続きを代行することがほとんどです。

抵当権を実行する方法|競売または収益執行

抵当権の実行とは、抵当権設定者が債務を支払わない場合に、抵当権者が不動産を処分して優先的な弁済を受けることをいいます。抵当権の実行には、①担保不動産競売と②担保不動産収益執行の2種類があります。

 

①担保不動産競売とは、抵当権者が不動産を差し押さえて競売にかけ、売却代金から優先弁済を受ける方法です。②担保不動産収益執行とは、不動産を差し押さえたあと、裁判所が選んだ管理人により不動産を運用させ、そこで得られた収益を弁済に当てることをいいます。

 

一般的に、抵当権者としてはできる限り早く債務の弁済を受けたいと考えるため、担保不動産競売が利用されることが多く、担保不動産収益執行が利用されることはあまりありません。

抵当権を外す方法|抵当権抹消登記

抵当権は、担保の対象となっていた債務の弁済や、消滅時効の完成、抵当権者による放棄などの原因により消滅します。

 

ただし、抵当権が消滅したからといって、登記簿上に記録された抵当権が自動的に削除されるわけではありません。自ら抵当権抹消登記手続きを行う必要があります。

 

抵当権抹消登記は、不動産の登記簿を管理している法務局で、必要書類を提出することで行います(オンラインによる申請も可能)。この際、申請書類と併せて、住宅ローンの完済を証明する書類も必要となるため、金融機関や保証会社等から取り寄せておきましょう。

 

抵当権抹消登記手続きについては、自ら行わず司法書士に依頼するのが一般的です。

抵当権に関して注意すべきポイント

抵当権に関して注意すべきポイント(画像:PIXTA)
(画像:PIXTA)

 

不動産投資を行う際には、抵当権に関連する重要なポイントがいくつかあります。ここでは、特に注意すべき2つのポイントについて詳しく説明します。

 

返済不能時・売却時のリスクを考える

抵当権を設定し金融機関へ担保提供することで、基本的には住宅ローンの金利を低く抑えることに繋がりますが、返済不能時のリスクについてしっかりと認識しておく必要があります。

 

抵当権が設定された不動産は、返済が滞った際に抵当権者に差し押さえられる可能性があります。差し押さえがされている不動産は、最終的に債権者によって競売や公売にかけられるものの、不動産市場ではリスクの高い物件として評価され、一般の市場価格よりも低い価格で取引されることが多いです。よって、不動産を売却したとしても、ローンの残額を賄えない可能性もあります。

 

そのため、抵当権を設定する際には、招待的な返済計画や売却の可能性を含め、慎重に検討することが重要です。

 

抵当権の内容を確認する

すでに抵当権が設定されている不動産を購入する際には、その抵当権の内容を詳細に検討することが重要です。

 

特に、1つの債権を担保するために、複数の不動産に抵当権が設定されている場合(共同抵当といいます)には、債務を完済しないことには抵当権の対象となっているいずれの不動産も売却することができません。後々になって、所有している不動産の一部を売却したくてもできないということが起こらないようにするためにも、抵当権を設定する段階において本当に設定して問題ないのかをしっかりと確認することが必要です。