不動産投資では多額の予算が必要となるため、抵当権を設定し融資を利用することが多いです。そこで本コラムでは、抵当権に関する基本的な知識や、質権などの他の担保との違い、設定方法などについて詳しく解説します。抵当権の特徴や注意点などを十分に理解し、不動産投資のリスクを抑えていきましょう。

抵当権の特徴

抵当権の特徴(画像:PIXTA)
(画像:PIXTA)

 

ここからは、不動産投資にあたって知っておくべき抵当権の特徴について詳しく紹介します。

 

抵当権がついていても使用収益・売買・相続できる

抵当権の一番の特徴は、抵当権設定後でも物件を自由に使用・収益ができるという点です。例えば、抵当権が設定されたあとに自ら入居することや、賃貸に出して家賃収入を得ることが可能です。さらに、抵当権がついたあとに、その物件を売買や相続の対象とすることもできます。

 

ただし、抵当権つきの物件は、抵当権設定者が債務を返済しない場合に抵当権者が抵当権を実行し、物件の所有権を第三者に売却することができてしまうため、不動産市場では抵当権が設定されたままの状態では一般的に売買はされず、抵当権を抹消してから売却することが通例です。

 

抵当権を抹消するためには、担保の対象となっている債務の完済が必要となりますが、住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、売却日の当日に売却資金によってローンを完済し抵当権を抹消することも一般的によく行われています。

 

抵当権には順位がある

抵当権は、1つの不動産に複数個設定することが可能です。例えば、不動産甲を購入するために住宅ローンAを組み、甲に抵当権A’を設定したあと、別の借り入れBを担保するために甲に抵当権B’を設定するような場合です。

 

このように、1つの不動産に複数個の抵当権が設定された場合、抵当権には順位がつけられ、上位の抵当権者ほど優先的に債権の弁済を受ける権利をもち、このことを優先弁済効力といいます。

 

抵当権の順位は、原則として登記の前後によって決まり、先に登記された抵当権ほど順位が高くなります。先ほどの例でいえば、時系列的には抵当権A’は抵当権B’よりも先に設定されていますが、抵当権の順位は登記によって判断するため、B’が先に登記され、A’が後から登記された場合には、B’が第一順位、A’が第二順位ということになります。設定した時系列ではなく、登記をした時系列が重要になります。

 

抵当権自体は登記をしていなくても当事者同士での契約により成立するものの、抵当権を設定する場合には第三者に対して抵当権を主張するために登記を行うことが一般的です。

 

なお、抵当権の順位は固定された物ではなく、抵当権者同士の合意があれば、順位を変更することも可能です。また、上位の抵当権者が債務の弁済を受け、抵当権が消滅した場合、後順位の抵当権者の順位が自動的に繰り上がります。

 

抵当権の対象とは?

抵当権の対象は不動産(土地または建物)です。しかし、抵当権の効力は単に不動産本体だけではなく、その不動産と一体になっている従物に対して効力が及びます。これを付加一体物と呼びます。付加一体物については、不動産から分離・搬出することができず、勝手に搬出しようとすれば、抵当権者からの差止請求・原状回復請求の対象となってしまいます。

 

抵当権の及ぶ範囲、すなわち不動産の付加一体物の範囲は状況に応じた判断が必要となり、非常に複雑なため、抵当権設定の際には契約書等をしっかり確認しましょう。

 

一般的な不動産投資の場合を想定すると、例えば建物に据え付けられた空調設備や音響設備などは、建物の付加一体物として、抵当権の対象となるでしょう。一方で、室内に置かれたソファやシーリングライトなど、簡単に取り外せる家具・家電などは、通常は抵当権の対象外となります。そして土地も付加一体物として扱われません。

 
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