実家を相続後に台風被害…まさか床上100センチ浸水
そんなとき直樹さんの父親が亡くなり、実家を相続するかどうか、という話が舞い込んできました。相続人は直樹さんの兄と妹の3人。きょうだいの話し合いのなかでは「思い入れの強い実家だが、住む人がいないなら売却するしかない」という雰囲気が漂っていたといいますが、そこで手を挙げたのが直樹さん。
――兄と妹は関西のほうに住んでいるし、住めるとしたら私しかいなかった
――ほとんどリモートワークで、出社するにしても1ヵ月に1度あるかないかだったので
それまでお互いの会社にも近い東京都心部に住んでいましたが、「出社の必要がほとんどないなら、静かな郊外に住むのもいいんじゃない? そのほうが家賃も安いし」という話をしていたところだったのです。
こうして郊外の庭付き一戸建てを手に入れた山本さん夫婦。諸費用や多少のリフォーム代をかけたものの、すべてキャッシュで一括払い。
――ほんとうなら、住宅ローンでヒーヒーいっている年齢。なのにローンゼロで、こんなに広い家に住めるなんて、私たち、ツイてるわね
ただ、そんなことをいっていられたのも少しの間。すぐに絶望の淵に落とされたといいます。今回のように台風の襲来。自宅周辺は過去にも̠河川の氾濫が発生していた地域で、そのため周辺は盛り土されていました。しかし想定を超える河川の氾濫となり、自宅は床上100センチ浸水。その様子を、2階からただ眺めているしかなかったと振り返ります。
――まさか、こんなはずでは……
水がひいて1週間。1階にあった家財道具はすべて廃棄。自身の保険や公的支援を駆使し、復旧作業にかかるお金はほぼゼロで済んだものの、その労力はかなりのものでした。最終的に元通りの生活に戻るまでは10ヵ月ほど、要したといいます。
さらにより安全に住むために、いずれ建て替えをし、その際にはさらなる盛り土をしようと考えているといいます。
ただそのときを振り返りよかった点としては、新しく保険に加入したばかりだったことだと山本さん。近所には加入時期が古く、補償範囲が限定的だったり、補償金額の上限が低かったりと、復旧にあたり金銭的負担を強いられた人もいたとか。
ソニー損害保険株式会社が国土交通省が公表している過去10年間(2013年~2022年)の水害被害額を調べたところ、その被害額は7兆2,939億円。都道府県別にみると、トップは「福島県」で7,277億円。「広島県」「岡山県」「熊本県」「福岡県」と続きます。
近年、頻発する自然災害により、保険金の支払いは増加傾向にあり、2024年度に火災保険料が改定される見通しだとか。家計によっては負担増となりますが、やはり万が一の時には生活を立て直す際には大きな力になってくれるものです。山本さんのご近所さんのように、古い保険に加入したままになっていて、補償が不十分という事態に泣きをみることも。自身がどのような保険に入り、何が補償されるのか、しっかりと把握しておきたいものです。
[参考資料]