高齢化が進む日本社会において、親の経済的な自立が困難になり、子どもが親の生活を支えざるを得ないケースがあります。長年連れ添った親との関係に葛藤を抱えながらも、経済的・精神的な負担を背負い込む子どもたち。しかし、その負担が限界に達したとき、親子の関係は大きく変化することも。みていきましょう。
娘が年収2,000万円だから大丈夫…「年金月8万円」でも老後不安を感じない65歳母、大企業に勤める独身ひとりっ子の42歳娘から告げられた「まさかのひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

経済的に困窮する母親

智子さんは最初の半年間は家賃を振り込み続けましたが、母親が行動を起こす気配がないため、心を鬼にして振り込みもやめることにしました。

 

母親は、一人で生活することが困難に。家賃を払うことができず、経済的に困窮。最終的には、生活保護を申請しました。しかし、扶養できる親族がいるという理由で断られ、智子さんに泣きつきます。そこで智子さんは仕送りで援助するものの、パート等で自身も働くこと、収入相応の賃貸を自分で借りることを約束させました。

 

この状況には、母親自身の選択や行動が大きく影響していることは否定できません。智子さんに過度に依存し、経済的な自立を十分に図らなかったという側面は、確かに存在するでしょう。しかし同時に、高齢化が進む日本社会における構造的な問題も背景にあると考えられます。厚生労働省の「被保護者調査」によると、高齢者世帯の被生活保護世帯数は増加傾向にあり、全世帯に占める割合も高い水準です。これは、年金受給額の低さ、病気や介護による支出の増加、核家族化による孤立など、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じていると考えられます。

 

智子さんの母親のケースは、個人の責任という側面を持ちつつも、社会全体の課題を映し出す鏡ともいえるでしょう。少子高齢化が進むなかで、高齢者の経済的な自立をどのように支援していくのか、現役時代からどのように備えるか、私たちは真剣に考えなければなりません。

 

智子さんは自分の選択を後悔することもあるといいますが、現在は母親の手を緩やかに放していくために陰ながら見守っています。