
「炊きたての白米を食べたくなる」のは遺伝子のせいか
「米が高くて、もう買わなくなりました。もう6ヵ月くらい炊飯器を使っていません」。そう語るのは、東京都下に暮らす河野明さん(仮名・75歳)。現役時代は自営業だったため、年金は国民年金のみの受給です。その額、およそ7万円。賃貸アパートの家賃は3万5,000円で、そこに光熱費や通信費、最低限の生活費を加えると、年金だけではとても暮らしていけず、貯蓄を取り崩す日々が続いています。
2021年後半から始まった物価高。その翌年には値上げラッシュとなり、2023年には消費者物価指数が1982年以来41年ぶりの上昇を記録しました。昨年の企業物価指数は前年度より3.3%上昇し、123.9だったとの発表がありました。終わることのないインフレに、「このままでは生活が破綻する」と危機感を募らせた河野さん。支出の見直しを図りました。最初に手をつけたのは食費。これまで近くのスーパーで何気なく買い物を済ませていましたが、より安いものを求めて、いくつものスーパーをはしごするようになりました。
それでも最近のコメの高騰は厳しいといいます。 「コメさえ食っていれば何とかなると思っていたのですが……頼みの綱のコメの値段がこの調子だと、何を食って生きていけばいいのかまったくわかりません」
コメ不足が深刻だった昨年の夏以来、コメを買うのを控えるようにしたという河野さん。「意外とスパゲッティのほうが安かったりするんだよ、計算してみると」といいますが、やはり日本人、炊きたての白米を食べたくなるのは遺伝子のせいでしょうか。どうしても、スーパーのコメ売り場の前では足が止まってしまうといいます。
「5キロで4,000円以上。倍近くになったな」と呆然と立ちすくむしかないといいます。
止まらない物価高騰。2024年の消費者物価指数(CPI)は、総務省のデータによると前年より3%以上上昇しました。特に生鮮食品や加工食品の上昇幅が大きく、家計への影響は深刻です。年金額が据え置かれるなか、「今までどおりに暮らす」ことが難しくなっている現実があります。