憲法に基づく制度であり、最終的なセーフティネットとなる生活保護。しかしネガティブなイメージが強く、生活に困窮していながらも「絶対、生活保護なんて受けたくない!」と拒否するケースも。生活保護への忌避感から、必要なサポートさえ受けない人たちとは。
生活保護は受けたくない…42歳男性〈フリーランスSE〉→〈日雇いバイトで月収10万円〉で困窮も、プライドが邪魔して万事休す (※写真はイメージです/PIXTA)

強烈な「忌避感」…45歳日雇いバイト男性、生活苦も「生活保護」は断固拒否

生活保護の不正受給といったニュースが大きく報じられたり、また生活保護を受けながらも一般の人よりも贅沢な暮らしをしているような動画が投稿されたりして、生活保護自体を非常にネガティブに捉える人も。このような風潮もあり、本当は申請が必要な水準でありながら、申請を躊躇う人も少なくはありません。

 

清掃や交通整理の日雇いバイトで生計を立てている佐々木修さん(仮名・45歳)。脳梗塞の後遺症から仕事は限られ、月収は多少の上下はあるものの、月12万円程度だといいます。ただ最近は仕事が減らされ、月10万円を切るときもあるといいます。

 

――月10万じゃ、生きていけねぇ

 

月2回、近所の公園で行われている炊き出しに並びながら窮状を訴えます。支援者から生活保護の申請についてアドバイスを受けることもあるといいますが、病気を発症する前、フリーのSEとして活躍していた佐々木さん、そのときのプライドがあるからでしょうか、「生活保護は絶対に受けたくはない」と頑として首を縦に振りません。

 

――生活保護なんて受けたら終わりだろ?

――もう、どうすることもできねぇよ

 

実際、生活保護を受けている人たちの生活とは、どのようなものなのでしょうか。生活保護費の基準となる最低生活費は、住む場所や世帯構成などによって変わります。たとえば東京23区在住、45歳の独身男性の場合、生活扶助は7万7240円、住宅扶助基準額は5万3,700円。合計13万0,940円が最低生活費。賃貸暮らしであれば、生活費に最低8万円弱、家賃に最低5万円強かかるということになります。1ヵ月の収入が10万円であれば、最低生活費との差額、3万円ほどが受けられる可能性があります。

 

ただ生活保護を受けているからといっても、生活の質には濃淡があるようです。厚生労働省の資料で単身の生活保護受給世帯についてみていくと、食事や買い物等、悲惨な状況に陥っている人も少なからずいることが分かります。

 

(金銭的余裕がなく)

●食事の回数が1日2回未満…7.7%

●肉・魚・豆腐などのたんぱく質を毎日摂れていない…7.5%

●野菜を毎日食べていない…10.1%

●新しい下着を買ったのは1年以上前…19.3%

●電気掃除機がない…8.0%

●固定電話をもっていない…8.0%

●携帯電話を持っていない…2.7%

●親戚の冠婚葬祭に出席できていない…19.1%

●生命保険に加入していない…35.2%。

 

生活保護を受ければ、それで解決というわけではありませんが、生活保護をうまく活用し、生活を再構築、再出発を果たすケースも珍しくありません。実際に2024年5月、前述のように令和最多の生活保護の申請があり、そのうち2万0894世帯が生活保護の受給が廃止されましたが、一方で1万8,786世帯が生活保護の受給を終了しました。生活保護の要件から外れたなど、理由はさまざまですが、一定数、生活保護受給により生活を安定させ、再出発へのきっかけをつかんだ人も少なくないでしょう。

 

生活保護は生活に困窮した際に受けることのできるひとつの権利。上手に活用することを考えたいものです。

 

[参照]

厚生労働省『被保護者調査』

厚生労働省『生活保護制度』

厚生労働省資料『生活の質の面からみた生活実態・意識の分析について』