高齢化と共に家族が認知症となるケースは増加。その介護負担は重く、QOLを高めるためにも施設での生活を選択するケースも増えています。しかし「老人ホーム」に入ったら安心というわけにはいかないようです……。
面倒をみきれません…年金17万円・77歳父「老人ホームから三行半」、転居先決まらず、家族も完全無視の絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

徘徊を繰り返す、元レスリング選手・認知症の父親

――お父さん、どこに行ったの?

 

父親の博さん(仮名・77歳)が認知症だという林田智子さん(仮名・47歳)。認知症が判明したとき、2つ上の兄、1つ下の弟と3人で、「誰が介護をするか」を話し合いましたが、「介護をするのは、どう考えても独身の私だ」と瞬時に理解したといいます。智子さんは実家に戻り、博さんの介護をスタート。3年が経ち、最近は症状が進行。目を離すとすぐに自宅を出てしまい徘徊を繰り返すようになりました。若い頃、レスリング選手だったというだけあり体力はかなりのもの。以前、10キロ先の国道を歩いているところを保護されたこともありました。

 

――もう自宅でお父さんの面倒をみるのは難しい……

 

老人ホームへの入所を考える頃なのかもしれないと、考え始めるようになったといいます。東京都福祉局『令和4年度認知症高齢者数等の分布調査』によると、東京都全体・認知症患者64万4,455人の住まいは、最多が「自宅」で36万5,337人、全体の56.7%。療養以外の医療機関で5万5,7192人(8.6%)、特定施設入居者生活介護適用施設が3万0,028人(4.7%)、指定介護老人福祉施設(特養)が2万7,834人(4.3%)と続きます。

 

介護度別にみていくと、要介護度1の最多は「自宅」で20.6%、続いて「ケアハウス等」が17.4%。要介護度2になると最多は「認知症グループホーム」で19.9%。続いて「自宅」が17.7%。認知症患者を在宅で看るか、それとも施設への入所を考えるかの境界線は、介護度1と介護度2の間にありそうです。

 

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』で現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因をみていくと、要支援2のトップは「関節疾患」19.8%。「骨折・転倒」「高齢による衰弱」と続きます。要介護1のトップは「認知症」で23.6%。「脳血管疾患(脳卒中)」「骨折・転倒」と続きます。また要介護度2、要介護度3のトップも「認知症」で、それぞれ23.6%、25.3%でした。

 

智子さんと、2つ上の兄、1つ下の弟とケアマネージャーの相談した決めたのは、自宅から車で1時間ほど。海の見える介護付きの有料老人ホーム。認知症患者の受け入れも行っていて、入居金100万円、月額費用20万円。年金月17万円(手取り15万円)の博さん。貯蓄からの取り崩しは月5~7万円に抑えたいと考えていましたが、予算的にも理想的なホームでした。

 

――父が育った家からは海が見えたそうです。海のみえるところで死にたい……以前、そんな話をしていたので