憲法に基づく制度であり、最終的なセーフティネットとなる生活保護。しかしネガティブなイメージが強く、生活に困窮していながらも「絶対、生活保護なんて受けたくない!」と拒否するケースも。生活保護への忌避感から、必要なサポートさえ受けない人たちとは。
生活保護は受けたくない…42歳男性〈フリーランスSE〉→〈日雇いバイトで月収10万円〉で困窮も、プライドが邪魔して万事休す (※写真はイメージです/PIXTA)

2024年5月、「生活保護申請件数」令和史上最多

厚生労働省『被保護者調査』によると、2024年5月、生活保護申請件数は2万3,952件で前年同月比5.6%増。令和になって以降、単月では最も申請件数が多くなりました。生活保護を受けている人は総計201万3,709人と前月比0.4%減少、世帯数では165万1,829世帯で前月比0.2%増となっています。また生活保護を受けている人で多いのは「高齢者世帯」で91万0,946世帯。全体の55%を占めています。

 

生活保護は、日本国憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に基づく制度。制度運用にあたり、基本原理と基本原則が生活保護法で定められています。

 

生活保護の基本原理は以下の4つ。ここで知っておくべきは「保護の補足性」。働ける能力があるなら働き、活用できる資産があるなら活用する。それでも生活に困窮している場合は生活保護が受けられます。

 

(この法律の目的)

第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

 

(無差別平等)

第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

 

(最低生活)

第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

 

(保護の補足性)

第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

 

また基本原則も以下の4つ。生活保護は基本的に生活に困窮する本人や同居する親族の申請により開始されますが、緊急性の高い場合は申請がなくても保護の対象になります。また、生活保護費は不足している金額を世帯単位で支給されます。ただし状況によっては、個人単位で受給も認められます。

 

(申請保護の原則)

第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。

 

(基準及び程度の原則)

第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

 

(必要即応の原則)

第九条 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。

 

(世帯単位の原則)

第十条 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。