総務省が発表した消費者物価指数によると、インフレ傾向は弱まりつつあるといいますが、物価高にため息が止まらない状況はまだまだ続いています。その影響は、親が老人ホームに入居する子どもたちにも。負担増により、子ども自身の老後にも暗い影が……。
年金15万円・81歳の母だったが、55歳長男が「私の老後は絶望的です」と悲観する「親の老人ホーム請求額」に驚愕 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホーム費用も続々値上げ…「子どもの負担増」→「資産形成に影響大」

そして毎月かかる月額費用。この費用にあらかじめ含まれているものはホームにより異なりますが、ほとんどのホームで家賃や食費、管理費、水道光熱費、そこに自立型(健康型)を除き介護費用が含まれます。さらに日用品代やおむつ代、美容代、医療費など、個人で支払う費用が発生します。

 

入居一時金は0~数千万円とピンキリ。富裕層をターゲットとするホームであれば、億を超える場合もあります。月額費用もピンキリですが、20~25万円程度がボリュームゾーンですが、低年金の人でも入居可能な特養などでは月5万~6万円から、また高級老人ホームであれば、月80万~100万円というところも。

 

さらに毎月の個人の支出として、平均3万~5万円がかかります。

 

前出の男性の母親の場合、入居一時金800万円は預貯金で払い、毎月の月額費用22万円は母親の年金月15万円、足りない分は預貯金から取り崩して対応できていたそうです。ただ2年前に、物価高を受けて、管理費と食費をそれぞれ1万円、合計2万円の値上げ。さらにその1年後には管理費1万円、水道光熱費1万円、食費1万円、合計3万円の値上げ……さらに月額費用に含まれない費用についても軒並み値上がりし、老人ホームからの請求額は2年前と比べて、6万~8万円ほど増えているといいます。

 

その分、母親の預貯金の取り崩しスピードはアップ。段々と余裕がなくなり、代わりに長男である男性が値上がり分を補填するようになったといいます。

 

老人ホームの入所期間は平均4~5年というものの、実際にどれくらいになるかは誰も分かりません。タイミングによっては、男性が補填している費用が戻ってくるかもしれませんし、その逆も十二分にあります。物価高が続けば、さらなる負担増という事態も。

 

「まだ住宅ローンの支払いも残っていますし、私自身も老後を見据えてもっと貯蓄していかないといけないタイミングなのに母の老人ホーム費用まで。私の老後は、すでに絶望的です」と男性。

 

株式会社TRデータテクノロジーが行った調査によると、2023年、月額費の値上げを行った法人は全体の26%。管理費の平均値上げ率は21.5%、食費は10.1%。2022年調査よりも値上げ額、値上げ率共に増加しているといいます。

 

老人ホーム費用は、入居者本人が負担するケースが64.0%と圧倒的ですが、入居者の子どもが払うというケースも25%ほど。その負担額はこの物価高により拡大したり、男性のように、入居者自身では払えなくなり、その分、子どもが負担するというケースも。その場合、子ども自身の資産形成に影響を及ぼすことも珍しくありません。どこかで負のスパイラルを断ち切る必要があります。

 

[参照]

総務省『2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2024年(令和6年)7月分(中旬速報値)』

株式会社TRデータテクノロジー『有料老人ホーム等の月額管理費・食費改定の現状調査結果を公開』

株式会社Speee/ケアスル 介護『費用は誰が支払う?「ケアスル 介護」にて介護施設の費用に関するアンケートを実施』