年々上昇する大学進学率。大学全入時代といわれて久しいですが、ただ大学に入るだけでは社会にでたときに有利にはならないのも周知の事実です。我が子によりよい教育をと、高い学費を支払って教育に熱を入れる親も多く……。その対価は、教育という名の投資に見合うものなのでしょうか? 本記事ではSさん夫婦の事例とともに、子供の教育の実情とお金について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
【大学全入時代】白金高級タワマンに住み、夫は年収2,100万円の42歳・エリートだが…「塾に行きたくない」と絶叫長女を引きずる妻の学歴コンプレックス〈FPの助言〉 (※画像はイメージです/PIXTA)

FPに聞いてみた

FPと現在の状況を整理しました。

 

住宅ローンは残り4,000万円ほどです。Sさんにとって無理のない余裕の残高でしょう。7年前の購入時に、自己資金として自分の預貯金3,000万円と、酒屋を経営していた祖父が亡くなったときに相続した3,000万円、そして父親からの購入支援1,000万円、あわせて計7,000万円を用意したことがよかったようです。

 

Sさんの年収は今後も増えていく予定であること、子供が1人であることから私立医学部に進学しても、「机上の計算上」では問題が起こらないと思われます。リスクとしては、マンションの管理費や修繕費が高騰しつつあるため負担増となりますが、ギリギリの家計ではないため大丈夫でしょう。また、Sさん本人が病気や障害で働けなくなったときに大問題が起こるため、保険等での備えは万全にしておくべきです。

 

とここまではお金だけの話です。

 

「実は、心理的なものなのですが、妻のことを少々心配していまして……」とSさんが言います。

 

「自分の夢というかなんというか、大きなものを子供に背負わせているように見えます。お金だけは僕が払えるので大丈夫ですが、最近娘は元気がなく、ストレスが溜まっているのかもしれません。このまま母親の理想を押し付けたら、いつか大人になった娘に絶縁を突きつけられるのではと心配しています」。

 

いわゆる毒親の問題となりかねないということでしょう。FPとして相談を受けていると教育熱心が毒親問題に発展していく様子を多く見ます。子供の精神面に深い傷を残してしまい、母親だけではなく父親に対しても「あのとき助けてくれなかった」という怒りを向けることも多くあります。子供の怒りと恨みによって家族が崩壊していまいます。

 

親が心に持つなにかが子供の心を壊してしまうのかもしれません。

 

ただ、現在は教育上恵まれた環境を子供に用意できています。私立中学に進学し、子供同士の環境から影響を受けて進路を決めるでしょうから、自然と親の望むような職業に就くかもしれません。しかし、「親ができなかったこと」をまるで恨みを晴らすかのように子供を利用するのは、毒親そのものになってしまいます。

 

やるべきことは夫婦間での冷静な話し合いでしょう。環境とお金は用意しても、進路を決めるのは最終的には子供の決断だと確認し合えたらいいと思います。また、妻Eさんが心の中に深刻なハードルを抱えている場合、カウンセリングなどによって吐き出してみるのも大切かもしれません。
 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表