年々上昇する大学進学率。大学全入時代といわれて久しいですが、ただ大学に入るだけでは社会にでたときに有利にはならないのも周知の事実です。我が子によりよい教育をと、高い学費を支払って教育に熱を入れる親も多く……。その対価は、教育という名の投資に見合うものなのでしょうか? 本記事ではSさん夫婦の事例とともに、子供の教育の実情とお金について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
【大学全入時代】白金高級タワマンに住み、夫は年収2,100万円の42歳・エリートだが…「塾に行きたくない」と絶叫長女を引きずる妻の学歴コンプレックス〈FPの助言〉 (※画像はイメージです/PIXTA)

白金タワマンに住まう40代夫婦

<事例>

夫Sさん 42歳 投資銀行勤務 年収2,100万円 富山県生まれ

妻Eさん 40歳 専業主婦 千葉県生まれ

子供 10歳

数年前に白金のタワーマンションを購入(9,700万円)

預貯金 4,500万円

 

Sさんは投資銀行に勤務する42歳の会社員です。年収は約2,100万円。住まいは数年前に購入した白金のタワーマンションです。価格は1億2,000万円でした。現在では値上がりしてしまい、2億円を下回る価格では到底無理でしょう。窓から見える東京タワーが気に入っています。妻のEさんは40歳。千葉県の公立高校を中退してから一時期モデル事務所に所属していたという、長身で非常に容姿端麗な女性です。

 

一見誰もが羨むエリート会社員の生活のように見えますが、実は夫Sさんにとってこの住宅環境は特に望んだものではありません。白金のタワーマンションを購入したのは妻Eさんの「人生の理想」を実現するためのものでした。

 

妻Eさんは長女を医師にしたいと考えています。そのための教育環境として理想的な場所は港区と考えているらしく、この白金にかなり無理をしてタワーマンションを購入しました。長女は現在、公立小学校に通っていますが、中学校からは大学まで私立と妻Eさんがすでに(勝手に)決めています。

 

夫Sさんはそういう妻の野心を目撃するたびに、とても息苦しく感じてしまいます。子供の進路など子供自身が決めればいいと考えているのです。夫Sさんは富山県生まれ。父親が地元企業の会社員、母親が保育士というごく普通の家庭で育ちました。Sさんは小学校のときから野球に打ち込み、高校までずっと野球部でした。中学時代はさほど勉強漬けではなかったものの、地元の優秀な公立高校に進学。高校でも野球中心の生活でしたが、都内の国立大に現役で合格しました。塾通いをした経験は一度もありません。

 

子供のころ、父親が毎日勉強する習慣をつけてくれたのが幸いしたと思っています。どこで聞いてきたのか、「小学生は学年+10分、中学生は学年+1時間」自宅で机に座り勉強する習慣をつけなさいと言い続けたのです。つまり小学6年生であれば60分、中学2年生であれば3時間だけ、家庭学習をすればそれなりの学力になるという意味です。非常に優秀な大学でしたが、必死に勉強してきたタイプは周囲にいなかったように思います。多くは高校までスポーツなど好きなことをしてきた話をする人が多く、「ガリ勉タイプ」は見たことがありません。

 

そんなSさんですから、妻Eさんの教育熱を見るたびに面食らってしまいます。「東京ってみんなそうなのか」とことあるごとにカルチャーギャップを感じてしまうのです。