高額なオール私立の学費を支払う理由
昨今は地方都市においても、夜に塾の前で子供を送迎する親の車が行列を作っている様子を見ます。大学進学のための教育熱は高まる一方です。しかし過去の進学率から考えると、その親世代の多くは大学進学の経験がないはずです。わが子はなんとしても大卒にしてあげたい、とにかく大学を出ればいい仕事に就けるはずだ、そう信じている親が多いのかもしれません。
しかし現実はそう甘くはありません。大卒というだけで就職に有利になることはないと思っていいでしょう。大学に見合った就職先になってしまうのが現実です。選ばなければ大学はどこかに入学できる「全入時代」ですが、そのなかでも優秀な大学に入学するためには学力だけではなく環境の力も大きいのです。その環境のひとつが、「オール私立」という考え方です。
幼稚園から大学まですべて私立学校を選択することで、受ける教育レベルを高めることが可能です。また学力や親の収入など生活環境や価値観が似ている子が集まるため、子供にとっても安全な場となる可能性が高いのもメリットです。将来の目標に対しても知識が増えると同時に目線が高くなり、学力において大きな差にもなります。さらにこの環境の力は「卒業生人脈」という、目に見えないパワーとなり大学卒業後の仕事においても大きなプラスとなるのはいうまでもありません。
ではオール私立でいくらかかるのでしょうか。
文部科学省「令和3年度子供の学習費調査 結果の概要」によると、幼稚園から高校までオール私立だった場合の学費は約1,840万円です。一方でオール公立では約577万円。3倍以上の差となります。さらに私立大学で文系学部の場合326万円、医歯科系学部の場合は6年間の納付金だけで約1,730万円が必要となります。これらには塾の費用や生活費は入っていないので、実際にはもっと必要です。
子供にいい環境を与えようと思っても、問題となるのはお金のことです。子育て期間は親にとって住宅ローンを借りてマイホームを手に入れる時期と重なります。教育費と住宅ローンの返済は両立するのでしょうか。高所得世帯ほど高価格帯の住宅に住まう傾向があるため、教育費の問題は誰であっても簡単な問題にはなりません。
また、お金だけではく、教育熱心になるがあまりに家族間の精神的な問題を引き起こすケースも多々あります。高所得でありながら教育費に追われ家族関係の危機に陥ったエリート会社員の事例をみていきましょう。