年々上昇する大学進学率。大学全入時代といわれて久しいですが、ただ大学に入るだけでは社会にでたときに有利にはならないのも周知の事実です。我が子によりよい教育をと、高い学費を支払って教育に熱を入れる親も多く……。その対価は、教育という名の投資に見合うものなのでしょうか? 本記事ではSさん夫婦の事例とともに、子供の教育の実情とお金について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
【大学全入時代】白金高級タワマンに住み、夫は年収2,100万円の42歳・エリートだが…「塾に行きたくない」と絶叫長女を引きずる妻の学歴コンプレックス〈FPの助言〉 (※画像はイメージです/PIXTA)

教育熱を生んだ妻の過去

妻Eさんを見るたびにふと、「なにかのコンプレックスでもあるの?」と思うこともしばしばです。妻から聞いている話では、Eさんは高校時代から学校に隠れてモデルの仕事をするようになったそうです。千葉県のあまり偏差値の高くない公立高校では、Eさんに激しく嫉妬する同級生もいて、仕事のことを学校に密告され発覚。遅刻などもあり素行が悪かったEさんは、不運にも高校3年生の夏に退学処分となってしまいました。

 

モデルといってもアルバイト程度のもの。それだけで生計を立てることはまったく不可能でした。Eさんは父親が建設会社の社長であったため、わずかな仕送りをしてもらいながら東京で1人暮らしをはじめたのです。夫Sさんが想像するには、若く美人なSさんには沢山の男性が集まり、分不相応な生活レベルを自慢したのだろうと思っています。学歴、卒業校、勤務先、年収、子供の学校、住んでいる場所と建物、持っているブランド品、高級車、高級時計、旅行、出入りする店など、即物的なマウンティングをし合う、あまり上品でも知的でもない世界にいたのではないかと想像しています。

 

白金の高級マンションを欲しがったのはそのころに植え付けられた価値観の影響でしょう。夫Sさんは大学時代を過ごした文京区の下町感あふれるところに住みたかったのですが、妻は全否定でした。夫Sさんは興味もなかったのですが、マンション購入の翌年には駐車場の車がベンツになりました。主に運転するのは妻です。Sさんは移動など電車で十分だと思っているのですが。

 

妻Eさんが「マンションの上の階の人と話したらマウンティングされた」などと言っているのを聞くと、「相手はそんなつもりはないだろうに、マウントと捉える君に問題があるよ……」とため息が出てしまいます。

 

妻の目下の関心は長女の中学受験。そして将来の医学部合格です。

 

「あの子がそれを望むなら必死で応援したいところだけど、まだ10歳だよね? 親が娘の将来を決めてしまうってよくないと思うよ」夫Sさんがそう言うと、妻Eさんは激昂します。「あなたのように田舎でのんびり育った人にはわからないだろうけど、東京で生きていくのは大変なの!」

 

田舎でのんびりしていたというのは偏見だろうと憤慨するSさん。君自身は中卒だし望むことがなにもかも背伸びしすぎじゃないの?と言いたいのを堪えました。東京で生きるといっても戦いじゃあるまいし。子供は子供らしく育った方が楽しい大人になるよと、しみじみ思います。でも妻が言うとおり、それが田舎の価値観だということなのでしょうか。

 

長女が塾に行きたくないと泣くのを大声で叱責する妻。見ていられなくなります。高額な費用をかけて複数の塾に通わせています。自宅に娘の友達が遊びに来たことなど一度もありません。

 

この生活は今後も成り立つのでしょうか。私立中学から私立大医学部まで進学させたらいったいどのくらいの学費がかかるのか、Sさんには想像もつきません。また住宅ローンはまだまだ残っています。教育費と住宅ローンは両立するのでしょうか。そして老後はどうなるのでしょう。

 

Sさんは妻には内緒でFPに相談することにしました。