年々上昇する大学進学率。大学全入時代といわれて久しいですが、ただ大学に入るだけでは社会にでたときに有利にはならないのも周知の事実です。我が子によりよい教育をと、高い学費を支払って教育に熱を入れる親も多く……。その対価は、教育という名の投資に見合うものなのでしょうか? 本記事ではSさん夫婦の事例とともに、子供の教育の実情とお金について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
【大学全入時代】白金高級タワマンに住み、夫は年収2,100万円の42歳・エリートだが…「塾に行きたくない」と絶叫長女を引きずる妻の学歴コンプレックス〈FPの助言〉 (※画像はイメージです/PIXTA)

令和5年度の大学進学率は過去最高値

現代の日本における大学進学率をご存じでしょうか。

 

「文部科学省 令和5年度学校基本調査『状況別卒業者数』」によると、大学進学率は57.7%となり過去最高でした。都道府県別に見ると、最高は東京都の72.8%、最低でも沖縄県の46.3%と軒並み高い割合です。平成10年は全国平均が36.4%であったため、近年急激に進学率が上昇していることがわかります。

 

大学進学率上昇の裏側で…多くの人を苦しめる「奨学金返済」の実態

高校卒業生の半数が大学に進学する時代において問題も発生しています。そのひとつが学費です。親の所得によっては子供の学費や一人暮らしとなった場合のアパート費用などを捻出することは難しいでしょう。そのため、奨学金を利用する学生が年々増えています。

 

しかしこの奨学金、卒業後の返済に苦しみ滞納する人もめずらしくありません。高所得の職業に就職できたらなにも問題はありませんが、卒業後に所得が低かったり、あるいはアルバイト生活となったりした人にとって、奨学金の返済は困難を極めます。もしも返済が遅れると、信用情報機関に登録され、将来の住宅ローンの取得や賃貸入居審査に悪影響をおよぼすのです。

 

2017年から日本学生支援機構ではホームページ上で、すべての大学、短大、専門学校の奨学金滞納率を検索できる仕組みを公開しました。学校ごとの検索しかできないものの、メディアが滞納率の高い大学ワーストランキングを作成したところ、地方都市の偏差値40前後の大学(Fランクともいわれる大学)が並んでいることが話題となりました。

 

子供にとって大学進学とはなんなのか、高額なお金の負担をしてまで進学する意味がある大学なのか、奨学金の意味を親と子供が本当に理解しているのかなど、いまも議論が続いています。