子どもにとって身近な職業である「教師」は、安定していることもあり人気でした。しかし、そんなことは過去の話。現在、教員採用試験の採用倍率も下降の一途を辿っています。何とかしようと、人気低迷の要因のひとつ「長時間労働」を是正しようという動きがあり、一定の成果が出ているようですが、実態はどうも違うようです。現場の声に耳を傾けてみましょう。
なぜ若い教師の代わりを私たちが…割を食う「氷河期世代の40代教師」の嘆き【学校現場の働き方改革の実情】 (※写真はイメージです/PIXTA)

不人気職業に転落の「教師」…元凶の「長時間労働是正」の成果は?

各地で2025年度の教員採用試験が行われていますが、その倍率が低迷していることはニュースでも報じられています(関連記事:『小・中・高 教員採用試験倍率の推移』)。

 

2025年度(2024年実施)の全体の結果については公表はまだ先ですが、最新の状況が発表されている自治体も。東京都の場合、応募者数は1万0,414名で、昨年度より949名増。ただ応募倍率(採用見込者数に対する応募者の割合)は、2.6倍と昨年の2.7倍から下落しました。

 

また学校の種別にみていくと、小学校では応募者数2,895名で、昨年度より292名増、応募倍率は1.7倍で昨年より0.1ポイントダウン。また中・高共通、および小・中・高共通では、応募者数5,184名で、昨年度より363名増、応募倍率は4.1倍と、昨年より0.3ポイントアップしました。

 

教員採用試験については、実施時期が民間企業の選考と比べ遅く、学生にとってはリスクだったという点があります。そのため東京都では大学3年生前倒し選考を実施するなど試行しています。

 

教員採用においては地域格差がも顕著。たとえば小学校。前述の通り東京都では採用倍率2.6倍でした。一方、秋田県は志願倍率で1.0倍。さすがに応募したら誰でも受かるというものではありませんが、数値上は「誰でも受かる」という状況になっています。

 

危機的状況にある教員採用ですが、大量採用となった団塊の世代の退職時期に少子化が重なったという事情もありますが、なによりも、教師の労働環境が厳しいこと、特に長時間労働が広く知れ渡り、敬遠されるようになったこともひとつの要因。そのため、昨今は、積極的に働き方改革を推進しています。

 

その成果は早速出ているようで、文部科学省『教員勤務実態調査(令和4年度)』によると、「1日当たりの在校等時間(平日)」は、小学校で「校長」が14分減、「副校長・教頭」が33分減、「教諭」が30分減。

 

管理職以外の一般の教師で30分ほどの労働時間の短縮。わずかですが、確実に成果となっています。何の時間が増えて、何の時間が減ったのか、業務ごとにみていくと、「授業」(+7分)「学習指導」(+6分)と、子どもたちへの教育に割く時間が増えた一方で、「学校行事」(▲11分)「成績処理」(▲8分)など、直接、授業には関係ない業務は減少傾向にあるようです。