「M&A」というと、企業の合併や買収の際に使われるイメージがありますが、実は法人所有の不動産におけるさまざまな問題を解決するひとつの手段として「不動産M&A」が注目を集めています。では、単なる「不動産売買」と比較し、どのような違いがあるのでしょうか。本稿では、フジ総合グループ・株式会社フジ総合鑑定の大阪事務所所長、住江悠不動産鑑定士が解説します。

不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識

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不動産M&Aのメリット

不動産M&Aを行う最も大きなメリットのひとつは、「税負担の軽減」です。不動産を所有する売り手の法人が不動産を売却して会社を解散する方法と、株式譲渡によって不動産M&Aを行う方法では、後者である不動産M&Aのほうが税引き後の手残り金額が多くなるケースがあります。

 

所有している不動産を現物売却して会社を解散する場合、売却した不動産の含み益に対して約35%の法人税が課税され、その後、ほかの資産なども換金または処分し、債務を弁済して残った財産がプラスの場合は、その現金を配当として株主に分配することになります。その際、株主には所得税が課せられます。総合課税である配当所得は、残額が大きいほど所得税の負担が増えます(最高税率約55%)。一方、不動産M&Aは株式の譲渡益に対して、申告分離課税の約20%の負担であることから、不動産M&Aのほうがより多く手元に残る可能性が高くなります

 

では、買い手側の税負担はどうなるでしょうか。不動産M&Aでは、所有権が移転するのはあくまで「株式」であり、不動産の所有権は売り手である 法人のままなので、買い手には不動産の取得に要する不動産取得税や登録免許税がかかりません。さらに一定の要件を満たせば、購入した株式の取得価額の一部を損金算入できる「経営資源集約化税制」という税制特例を活用することができるため、買い手側にも大きなメリットがあります。

売り手と買い手がWIN-WINの不動産M&A

不動産M&Aは、「不動産の譲渡」を目的としたM&Aです。会社の株式を譲渡の対象とするため、とくに税金面において売り手と買い手の双方に大きなメリットがあります。

 

また、M&Aに関する税制優遇措置が受けられる場合があるため、不動産M&Aは不動産オーナーが抱えるさまざまな悩みを解決する新しい手法のひとつとして、広がりをみせています。

 

不動産売買とM&Aの要素をあわせ持った「不動産M&A」は、通常のM&Aに必要とされる高度な知識や交渉力、適切な手続きに加え、不動産・税務に関する高い専門性が求められます。適正な不動産評価や株価の算定をするためには、税理士と不動産鑑定士による多面的な視点が必要です。不動産の売却をご検討されている方は、不動産M&Aの実施も視野に入れ、専門家に相談することをおすすめします。
 

 

住江 悠

フジ総合グループ 大阪事務所 所長

不動産鑑定士

 

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