前回は、クリニックに対する税務調査の実態を説明しました。今回は、「医院」「医療業」の申告漏れに対する国税の摘発の状況を見ていきます。

「医院」も多額の追徴課税がなされている業種の一つ

図表1は、1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位5業種を国税庁がリストアップしたものです。

 

例えば、16事務年度の1位の貸金業、2位のキャバレー、3位の風俗業、4位の商品販売外交に続いて、何と5位に病院(クリニックを含む)が挙がっています。

 

1件当たりの申告漏れ所得金額は約1344万円で、追徴税額は553万円です。

 

このデータからは、クリニックに対しても他の業種と同様に税務調査が行われており、その結果として所得の申告漏れが指摘され、多額の追徴課税がなされている状況をうかがい知ることができます。

 

【図表1】 事業所得を有する者の最近10年間の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種

(注)1件当たりの申告漏れ所得は、調査全年分に係るものである。
出典:国税庁HP「平成24事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」 
事務所得を有する者の最近10年間の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種
(注)1件当たりの申告漏れ所得は、調査全年分に係るものである。 出典:国税庁HP「平成24事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」 事務所得を有する者の最近10年間の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種

しばしば摘発されているドクターの脱税・申告漏れ

もう一つ、やはり国税庁が公表している資料を見てみましょう。図表2は「告発の多かった業種」―具体的には告発した査察事案で多かった業種・取引をリストアップしたものです。

 

平成22年・23年にはランクインしていなかった医療業が24年には5位に入っていることに注目してください。

 

このようにドクターの脱税・申告漏れはしばしば摘発されており、しかも先の資料とあわせて考えれば、その件数はほかの多くの業種と比べても決して少なくありません。

 

【図表2】告発の多かった業種

(注)同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウントしている。
出典:国税庁HP「平成24年度査察の概要」
告発の多かった業種
(注)同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウントしている。 出典:国税庁HP「平成24年度査察の概要」 告発の多かった業種

本連載は、2016年9月27日刊行の書籍『クリニック税務調査読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

クリニック税務調査読本

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髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

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