老後、もし介護が必要になったら……。介護費用の負担が心配な人は少なくないでしょう。限られた老後資金から介護費用などの想定外の支出に準備するため、投資などの資産運用を行っている場合、運用した「あと」のことまでイメージできていますか? 見落とされがちな落とし穴もあるため注意が必要です。本記事ではAさんの事例とともに、現金以外で保有する資産の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
年金月20万円の85歳・元バブル企業戦士〈資産5,200万円〉の父、脳梗塞で倒れ施設へ→お金は問題ないはずが…入居から1年「老人ホーム費用が足りません」56歳長男、顔面蒼白のワケ【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

母を見送ったあと、突然の脳梗塞で倒れた父

Aさん(85歳)は2年前に長年連れ添った妻を亡くして大阪で一人暮らしをしていました。子どもは2人いるものの、長男B(56歳)は東京で勤務しており、転勤族のためなかなか父親のもとに帰ることはできません。長女C(52歳)も結婚しており、ご主人の仕事についていく日々、こちらも全国勤務がある転勤族で、長男同様に父親のもとに帰ることはできません。

 

2人は父親の一人暮らしを心配しながら見守っていましたが、あるときを境に父親は一人暮らしを継続できない事態に陥ってしまいます。

 

ご近所の人から長男Bへ突然の電話があり、「Bさんのお父さん、頭が痛いと言って連絡してきて救急車で搬送されたわよ!」と知らせてくれたのです。慌ててBさんは休暇をとり、実家に帰ったものの、父親の診断結果は脳梗塞でした。

 

一命は取り留めたものの、日常生活を送れないほどに障害が残ってしまい、父親の状態はとても一人で暮らしていける様子ではありませんでした。

 

介護付き有料老人ホームへ入居、父の貯金はたった200万円だったが…

長女Cとも相談のうえ、Aさんは幸いにも受け入れを表明してくれた介護付き有料老人ホームで新たな暮らしを始めることになります。Aさんが入居する介護付き有料老人ホームの月々の費用は、賃料や管理費、食費を含めて25万円ほどです。Aさんの年金は毎月20万円ほどでしたから、毎月5万円の持ち出しが発生します。

 

Bさん、Cさんは実家からAさんの通帳を探し出してきて残高を確認します。しかし、その金額は200万円ほどのもの。たちまち困るということはないものの、これでは安心できません。

 

もう少し書類を探していくと、証券会社の取引残高報告書が出てきました。残高をみるとバブルを生き抜いたAさんは株式が時価評価で4,000万円、投資信託は1,000万円という潤沢な資産を持っていたのです。これを見て、BさんとCさんはホッとします。

 

これだけあれば、父親は安心して老人ホームでの生活を送ることができると……。