老後、もし介護が必要になったら……。介護費用の負担が心配な人は少なくないでしょう。限られた老後資金から介護費用などの想定外の支出に準備するため、投資などの資産運用を行っている場合、運用した「あと」のことまでイメージできていますか? 見落とされがちな落とし穴もあるため注意が必要です。本記事ではAさんの事例とともに、現金以外で保有する資産の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
年金月20万円の85歳・元バブル企業戦士〈資産5,200万円〉の父、脳梗塞で倒れ施設へ→お金は問題ないはずが…入居から1年「老人ホーム費用が足りません」56歳長男、顔面蒼白のワケ【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

もし配当金をを銀行口座で受け取っていたら…

日本取引所グループの統計データによると2024年4月の東証プライム市場銘柄の、単純平均利回りは2.01%になります。Aさんは4,000万円の株式を所有していたため、年間80万円程の配当金収入が見込めたのです。この年間80万円を銀行口座で受け取ることさえできていれば、年金と配当金だけで、施設代を賄うことができて、成年後見制度の検討をすることすら必要なかった可能性があるのです。

 

一方、銀行で指定の金融機関で受け取る方式(登録配当金受療口座方式)を選ぶと、特定口座内での損益通算ができなくなるなど利便性に欠ける点もあります。この場合は証券会社ごとのサービスとして、一旦は証券総合口座で受け取った株式の配当金や投資信託の分配金を自動で出金先の指定口座に振り込むサービスを利用するという手もあります。

 

どのようなサービスが使えるかは、証券会社によって異なりますので、証券会社ごとのサービス内容はあらかじめ確認しておくことが大切です。

 

証券口座を持つ理由の多くは老後の資産運用、資産形成のためということが挙げられますが、証券会社は金融機関であっても、その使い勝手は銀行口座と異なる点が多くあります。せっかく築いた資産がいざというときにどのように使えるのか、現金化されるのか、その仕組みは事前に理解して準備をしておかないと、いざ必要というときに効果的に使うことができなくなってはいけません。

 

非情に地味な点ですが、資産運用に成功して、老後の安心に繋げるためにも、運用した資産はいざというときにしっかり使えるように準備しておく必要があります。

 

※本記事は、実際にあった出来事をベースにしたものですが、登場人物や設定などはプライバシーの観点から変更している部分があります。また、実際の相続の現場は、論点が複雑に入り組むことが多々あり、すべての脈絡を盛り込むことは話の流れがわかりにくくなります。このため、現実に起こった出来事のなかで、見落とされた論点に焦点を当てて一部脚色を加えて記事化しています。

 

 

森 拓哉

株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン

代表取締役