故人と相続人、双方の思いを繋ぐ生命保険。しかし、加入してそれきり、という人も少なくないのが実情です。いざというときに後悔することのないように、内容を正しく把握し、面倒に感じても時折メンテナンスを行うことは、非常に重要です。本記事ではAさんの事例とともに、相続財産の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
可愛がってくれた85歳孤独な伯母の死後、保険金1,000万円をもらうはずが…引き出しに捻じ込まれた「古びた保険証券」が知らせる、あまりに残酷な事実【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

伯母の財産はすべて相続できると思っていたが…まさかの展開

生命保険文化センターによる2021年度の生命保険に関する全国実態調査によると、生命保険の世帯加入率は89.8%、普通死亡保険金額は平均で2,027万円と、前回の調査(2018年度)と比べると低下傾向にはあるものの、依然として高い水準を維持しています。

 

一方で、生命保険は複雑なものも多く、内容を正確に把握できているかと問えば、「なにかに入っているとは思うけれど、詳しくはわからない」と答える方が大半でしょう。生命保険料の支払い額は、年間平均37万1,000円にもおよび、決して小さな金額とはいえません。せっかくの資金を投じて加入している保険を効果的に活用するためにも、定期的なメンテナンスは必須です。

 

今回の記事では、放っておかれてしまった1つの保険をめぐる悲劇について紹介したいと思います。

 

※事例は、実際にあった出来事をベースにしたものですが、登場人物や設定などはプライバシーの観点から変更している部分があります。また、実際の相続の現場は、論点が複雑に入り組むことが多々あり、すべての脈絡を盛り込むことは話の流れがわかりにくくなります。このため、現実に起こった出来事のなかで、見落とされた論点に焦点を当てて一部脚色を加えて記事化しています。

一人暮らしの伯母と母を亡くした姪、支え合って生きてきたが…

25歳で結婚し、2人の子宝にも恵まれ幸せな日々を過ごしていたBさん(現在50歳)は、10歳のときに、母親を病気で亡くしています。両親から愛情深く育てられていたひとりっ子のBさんは、深い悲しみに暮れながら日々を過ごしていましたが、そんなBさんの心の支えになってくれたのが、母親の姉である伯母Aさんの存在でした。

 

おおらかで、優しく面倒見のよいAさんは、常にBさんのことを気にかけ、まるで実の母親のように接してくれました。母親の急逝は悲しい出来事ではありましたが、Bさんにとっては、学生生活を過ごし、社会に出て、結婚、出産、子育てとライフステージに変化があっても、常に温かいサポートをしてくれた伯母Aのおかげで、幸せな日々を送れているという実感があったのでした。