(※写真はイメージです/PIXTA)

父の死後、一人息子の裕司さん(仮名)は、父の通帳を握りしめて銀行へ急ぎました。多額の借金を抱えた彼にとって、この遺産は一筋の光明のように思えたのです。しかし彼は銀行で絶望することになります。本記事では、相続発生後の口座の管理についてみていきます。

借金地獄に陥った息子、父の死を知り…

定年後も堅実な生活を送っていた田中一郎さん(仮名)。彼の年金は月額20万円超で、つみたてていた投資商品からの収入もあり、慎ましくも充実した老後を過ごしていたそうです。

 

一方、息子の裕司さん(仮名)はというと、浪費癖があり、度重なる無計画な借金を重ね、最終的には500万円を超える負債を抱えていました。

 

裕司さんは父親が堅実な生活を送っていること知りつつ、自分自身の経済状況については立て直そうとしていませんでした。借金返済のための努力よりも、父の財産に頼ればいいと、心のどこかで期待していたのです。

 

そんななか、一郎さんが急逝しました。悲しみに暮れる間もなく、裕司さんはすぐに父の遺産を確保しようと考えました。彼は父の通帳を見つけると、それを握りしめて銀行へと急ぎました。「親父は金持ちだから…。このお金で借金を返済しよう」と、裕司さんは企んでいました。

 

銀行に到着した裕司さんは、早速窓口に向かい、父の口座からお金を引き出そうとします。しかし、銀行員から返ってきた言葉に彼は驚愕しました。「申し訳ありませんが、この口座は凍結されています。」銀行員の説明によると、口座名義人の死亡により、法的手続きを経るまで口座の引き出しは一切できないということでした。

 

裕司さんは、「なんでだよ! 親父の金だぞ! 俺の借金を返すために必要なんだ!」と息巻きましたが、銀行の対応は変わりませんでした。口座凍結の事実を前に、彼は手も足も出せなかったのです。

 

口座名義人が亡くなると、その口座は自動的に凍結されます。これは、不正な引き出しを防ぎ、正当な相続手続きが行われるための措置です。相続手続きを経ずに口座から引き出しを試みることは違法になります。

 

相続人が複数いる場合、口座からの現金の引き出しには全員の同意が必要です。これには、相続人全員が署名する遺産分割協議書の作成が含まれます。遺産分割協議書は、相続財産の分割方法を記載したものであり、全員の同意が得られなければ法的に有効とは認められません。さらに、この遺産分割協議書を公証人役場で認証を得る必要もあります。認証を受けることで、書類が正式なものとして法的効力を持つようになります。

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