大黒柱を失った家族に対する公的保障である「遺族年金」。子の要件がない遺族厚生年金は、受給権が失権しないかぎり、生涯払われ続ける可能性があります。しかし、離婚が絡んでくると状況は複雑に……みていきましょう。
月収40万円・45歳のサラリーマン急逝…3年前に別れた妻、「遺族年金ゼロ」に年金事務所で崩れ落ちる「ちゃんと養育費をもらっておけば」

別れた妻と暮らす子供…「遺族年金の受給権」はどうなる?

一生を誓い合ったとしても、夫婦が別れるのは仕方がありません。しかし離婚後、養育費あり/なしで、万が一の時に大きな差が生じるケースがあります。

 

たとえば子1人(5歳)いる夫婦(妻40歳、夫・会社員42歳)が離婚。それから3年後、元夫が急死。元妻は「離婚していても、子供は遺族年金をもらえるらしいよ」とアドバイスを受けて年金事務所に相談へ。しかし色々と状況を聞いた職員は「このケースでは遺族年金は受け取れませんね」とぴしゃり。淡い期待をしていた元妻、膝から崩れ落ちそうに。「ちゃんと養育費をもらっておけば……」。

 

順を追ってみていきましょう。そもそも通常の夫婦であれば、夫が亡くなった場合、妻は遺族年金が受け取れます。まず国民年金に由来する遺族基礎年金として、81万6,000円+子の加算額(1~2人目:各23万4,800円、3人目以降:7万8,300円)。そして夫が会社員であれば、厚生年金に由来する「遺族厚生年金」も。その額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。

 

仮に亡夫が20歳~亡くなる45歳まで平均的な給与を手にしているサラリーマンだったなら、亡くなる直前の月収は40.6万円、年収は670.9万円ほど。遺族に支払われる遺族厚生年金は年54.2万円ほどになる計算です。

 

では離婚した夫婦の場合はどうなるのでしょうか。まず妻は離婚しているので、そもそも遺族ではありません。子はどうでしょうか。遺族年金における子の要件は「18歳になった年度の3月31日までにある、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子」。子の要件に当てはまります。しかし、遺族年金においてはもうひとつ、「生計維持関係にある」ことが重要。養育費が払われていない場合は「生計維持関係」になく、結局「遺族年金はゼロ」ということになります。

 

離婚した夫婦であっても、子には遺族年金の受給権が発生します。そこで決め手になるのが「生計維持関係」であり、養育費のアリ・ナシが大きく影響してくるのです。離婚の原因によっては、養育費についてきちんと話し合えないケースもあるでしょう。ただ養育費のアリ/ナシは、万が一の際の遺族年金にも影響があることを、知っておいても損はありません。

 

[参考資料]