Aさんの“正直な回答”に調査官は唖然
調査官「旦那さんの相続税の申告書に記載されている財産額について、病院を経営されていたころの確定申告の収入と所得から考えると、明らかに少なすぎますね。これは何故ですか?」
Aさん「それは……夫は仕事を息子に譲ってからというもの、ギャンブルにはまってしまったんです……」
調査官「いやいや、それにしてもあまりに少なすぎませんか。開業医の旦那さまがギャンブルでここまで資産を減らすとは、正直信じられません。なにか証明できるものはありますか?」
Aさん「こちら、主人がつけていたノ-トです。主人には変なクセがあって、ギャンブルの勝ち負けをすべて記録していたんですよ。このノ-トにすべて記載されていると思います」
調査官「まさかそんな……ありがとうございます。お借りします」
もともと几帳面だった夫は、自分のギャンブル戦績をすべて記録してあったのでした。調査官が急ぎ調査した結果、ノ-トにあるギャンブルの収支と口座のお金の流れがおおむね一致したため調査は終了。追徴課税は発生しませんでした。
当然だが…「ギャンブルで負けた=免罪符」ではない
一定以上の所得や財産がある場合、確定申告書とあわせて「財産債務調書」を税務署に提出する必要があります。そのため、税務署は「財産債務調書」を提出していたAさんの夫の資産状況を把握していたと考えられます。
この把握していた財産と、提出された相続税申告書に記載された財産が大きく異なっていたため、申告漏れがあるのではないかと勘ぐられ、税務調査の対象として選ばれることになってしまったのでしょう。
今回のケースでは、Aさんの夫は几帳面にギャンブルで負けた額の記録をつけており、実際にギャンブルで負けたことが証明できたので、なんとか認めてもらうことが出来ました。
ただし、ギャンブルで負けたと言えばなんでもかんでも認められるわけではありません。実際は違うのに、ギャンブルで負けたと言ってしまい、のちに相続財産の申告漏れを指摘された場合、仮装、隠蔽しごまかそうとしたと判断され、本税に対し35%~40%の重加算税という思いペナルティを課せられる可能性があります。調査官もそのように答えられた場合、裏付けがない場合は認められないこととなります。
相続税の申告の際は、過去の収入額や所得額と照らし合わせ、実際の相続財産が少ない時は、税務調査に備え、その理由を把握しておくと良いでしょう。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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