収入が高く、思い描いた暮らしを手に入れたとしても、想定外の出来事によって、生活が一変することがあります。なかには、それまでの働き方を変えざるを得ないケースも。そうした場合に、どのような救済措置を受けられるでしょうか? 本記事ではYさんの事例とともに、ケガや病気を理由に収入が減った場合の救済措置について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
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さらなる追い打ち

Yさんはだんだんと食欲がなくなり、気分が落ち込む日が増えるようになります。1人きりでの介護は想像以上に負担がかかったのです。

 

引きこもりがちになったYさん。時間をみつけて医療機関を受診したところ、うつ病と診断されました。Yさんは、介護休業給付金を受けたあと、自身がうつ病となり健康保険から傷病手当金を通算で1年6ヵ月受けました。

 

そこでさらに絶望を感じる出来事が。母親の様子が少し変なのです。感情の浮き沈みが激しくなったことだけでなく、明らかに物忘れがひどくなっています。リハビリで通っている病院の神経内科を訪れたところ、認知症と診断されました。終わりがまったく見えなくなった介護への心労から、Yさんの容態は悪化します。もはや復職できるような状態ではなくなりました。Yさんの会社では病気や介護による休職できる制度がありますが、生活保障まで万全にあるわけではありません。

働き方を変え、正規雇用から非正規雇用へ

厚生労働省の雇用動向調査によると、2022年に離職した人は約765万7,000人といわれています。そのうち個人的理由で離職した人は73.5%で約563万人。そのなかで、個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約1%で約7万3,000人となっています。また、「死亡・傷病」を理由とする離職は全体の約2%で約15万人となっています。

 

介護をしながら、自身の病と向き合っていくためにはどうしたらよいのでしょうか……。Yさんは、傷病手当金を通算で1年6ヵ月受けたあと、障害年金の請求をすることにします。

 

障害年金は病気やケガで生活や仕事などが制限されるようになった場合、療養や生活保障として受け取ることができる年金です。障害年金を受給しながら、もとの生活に戻ることができずに悩んだあげくYさんは、退職したほうがいいのではと会社に相談します。

 

会社では、Yさんを心配し、自身の病気が快方しつつあるなら、正規雇用のまま一定期間を短時間制度(1日8時間を6時間に短縮)で働くこともできるということです。また、短時間制度で働くことが難しいようであれば、Yさんと会社で合意することで、非正規雇用で働くこともできるといってくれたため、週3回の非正規雇用で契約し、少しずつ働くことにしました。

 

しかしながら、非正規雇用ではいままでの収入の5分の1以下になるようです。うつ病が悪化し、非正規雇用でさえ働くことができなくなってしまったら……一瞬、Yさんの頭を最も考えたくない事態がよぎります。