妻がどうしても持ち家が欲しいワケ
妻Bさんは持ち家が欲しいと言い続けています。
2人の年収なら十分な家が手に入るだろうし、自己資金も多少出せます。妻Bさんは、車が2台あるので郊外の安い土地に家を建てたらさほどの負担感ではない、とことあるごとにいっています。妻Bさんは自宅の庭でのガーデニングに憧れがあるのです。ガーデニングは重作業でもあるため老後にはやりたくはありません。若いうちにやってみたい趣味です。
そしてそれ以上に、娘にとっての実家がないことが気になっています。この貸家に一生住めるわけででもないので、将来、娘が帰る場所がないのが可哀想だと思うのです。妻Bさん自身は公営住宅で育ちましたが、数年前に両親が亡くなったためもう実家といえる場所がないのです。
それを聞いた夫Aさんがいいます。
「そんなの全部感情論じゃないか。感情のことはいいから、家を買うメリットってなに?納得いくように教えて。庭付きの戸建てなんて浪費じゃないの?」
そのたびに妻Bさんが憤慨して答えます。
「そういう物言いをモラハラっていうんですよ」
損得勘定にばかり熱心で、他人の感情に共感する力がない夫に、最近はうんざりし始めているほどです。
「そんなに私の希望を全否定するなら離婚も考えます」
FPに相談してみた
持ち家が欲しい妻と欲しくない夫。2人だけの話し合いだけでは歩み寄るどころか亀裂が深まるばかりなので、第三者としてFPに相談してみることにしました。
FPに計算してもらうと、安全な予算は5,000万円程度であるとのこと。娘を高校から私立にしたいという要望があるため、住宅の予算は抑えています。
「5,000万円なんてこの年でありえない」と夫Aさんは猛反発です「5,000万円でマンションなら将来値上がりしたら売ればいいし、それなら検討の余地がある」。
妻Bさんは苛立ったようにいいます「だから娘の実家が欲しくて買うのだから売ることはないし、私はガーデニングがしてみたいと何度も言ってるよね? マンションが欲しいといつ私が言ったの」。
FPがいうのは次のようなことでした。
・持ち家にしたほうが、Aさん夫婦にとっては損得勘定でも得である
・いまの賃貸物件は定年退職までは住み続けられない
・老後は賃貸を借りづらくなる
・老後にも賃貸暮らしを選ぶのは妻Bさんの意向を無視している
・損得勘定はともかく、妻Bさんが強く持ち家を願うなら、実現させたほうがいい
損得としても、感情としても、妻Bさんの思いを実現させたほうが夫婦関係も良好になるし、家庭生活の安定も得られるという結論でした。
「そんな感情論で借金をするなんて……家を購入したら住宅手当もなくなるのに……」と夫Aさんは納得できない様子でしたが、結局は持ち家を購入することに決めました。