長年議論となっている「賃貸派と持ち家派、どちらが得か」というテーマ。条件などにより答えは1つではないでしょう。本記事ではAさんの事例とともに、賃貸にすべきか持ち家にすべきかの判断ポイントについて、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
年収650万円の40代地方公務員、「一生賃貸派」だったが…いまさら老後資金を回してまで「5,000万円のマイホーム」を決断したワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

持ち家を選択すべきであっても、「建物の仕様」を間違えると悲惨

「そうか、我が家は持ち家にすべきなんだな」と判断したとしても、注意すべき点があります。

 

それは、イニシャルコスト(購入費用)だけで考えてはいけないという点です。建物には維持費が必要です。戸建てであれば屋根外壁のメンテナンス、エアコンや給湯器の交換、太陽光発電システムのメンテナンスや交換、床暖房設備の修理や交換、そして将来の大規模修繕やリフォーム、建て替えなどです。

 

屋根外壁のメンテナンスを怠ったばかりに漏水し、木材腐朽菌を繁殖させることによって建物寿命を短くさせることも考えられます。20代のうちに住宅を購入する人も多くいますが、「一生その家に健康的に住み続けられる建物なのか」という視点は重要です。

 

また、昨今の光熱費の高さには多くの人が不安を抱えています。「気密断熱性能が高いので光熱費が安いといって売りこまれたが、むしろ高くなった」といっている人も多いのが現実です。

 

どんな値段の家であろうと、新築のときはどれも清潔でお洒落にみえます。しかしなかには、その後の劣化のスピードが驚くほど速い建物があります。頻度の高いメンテナンスをすれば問題はありませんが、その費用が問題になるのです。

賃貸派の夫 vs. 持ち家派の妻…40代夫婦の論争

<事例>

42歳公務員、計算上は一生賃貸が「得」だが、妻は大反対

 

夫Aさん 42歳 公務員 年収650万円

妻Bさん 42歳 会社員 年収320万円

娘 13歳

預貯金 2,700万円

現在の家賃 9万円

 

Aさんは公務員として働く42歳です。15年前に結婚してからずっと賃貸暮らしです。最初は官舎に住んでいましたが、古い建物のため結露がひどく妻Bさんの喘息がひどくなってしまいました。それからずっと戸建ての賃貸物件に住んでいます。

 

30代のころは同期の人達が次々にマンションや戸建ての持ち家を購入していました。自分も買うべきなのか迷った時期もありましたが、決断することはありませんでした。

 

いま住んでいる戸建て賃貸は延床面積で32坪。築25年になるため新しくはありませんがAさんは気に入っています。最近もエアコンと給湯器、玄関のポーチライトが壊れましたが、大家さんが迅速な対応で交換してくれました。もちろんAさんの費用負担はありません。これが持ち家だったら自己負担なのでお得な気分でいっぱいです。大家さんは非常に物腰の柔らかい50歳の男性で、ほかにも多くの物件を所有するやり手の投資家のようです。

 

さらに、職場からは賃貸物件に住んでいる以上、2万8,000円の住宅手当が支給されるのです。実質6万2,000円で戸建て住宅に住んでいることになります。いまどき月返済額6万2,000円ではこんなにいい家には住めないため、どう考えても賃貸のほうが得、そう考えていました。

 

しかし妻Bさんの意見は違います。