婚姻の約4件に1件が「再婚」となっている日本。そのうちの2~3割程度は子連れでの家庭を築いています。複雑化する家族の形のなかで、問題となるのが遺産相続。本記事ではAさんの事例とともに、再婚家庭における相続の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
「面倒を看てくれてありがとう。全財産3,000万円は愛娘へ」80代父の死後、なぜか銀行から門前払いを受ける長女…世間知らずな親子に訪れた悲劇【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

お互いに離婚歴のある再婚夫婦

Bさんは、2人の子どもの親権をもち、子どもの将来を守るために就職して懸命に働いていました。もともと温厚で優しい性格のAさんはBさんの苦労話を聞いて、力になりたいと思い始めます。

 

どこか心に隙間風が吹いていたBさんもAさんに惹かれるのにそれほど時間はかかりませんでした。お金の面での心配もあったことから仕事熱心で経済力のあるAさんの姿は、非常に魅力的に映りました。

 

こうして2人は晴れて再婚することに。

 

歩み寄りの努力のおかげで、仲の良い家族に…

結婚後は、BさんがAさんの戸籍に入ることにしたのですが、Bさんの連れ子である中学生のCちゃん、小学生のD君の2人の子どもはそれぞれ性格が違うこともあり、再婚相手のAさんと上手く過ごせるかどうか、未知数でした。Bさんの前夫は、妻には暴力的な振る舞いがあったとはいえ、子ども達(特にCちゃん)に対しては優しい側面があり、Cちゃんはお父さんとの思い出を大切にしているように映りました。

 

暮らしてみなければ、前のお父さんと新しいお父さんとの感情の狭間でどのような家庭を築けるかはわかりません。子どもとAさんの養子縁組に関して、AさんもBさんも少しは頭をよぎることもあったのですが、再婚してBさんがAさんの戸籍に入ること以外は深堀りすることなく新しい暮らしを始めたのでした。

 

再婚後、AさんとBさんはともに必死で働きました。

 

2人の仲のよさを見ていたCちゃんとD君も、やがてAさんのことを新しいお父さんとして受け入れ、再婚後は本当の家族として過ごすことができたのでした。

 

母も義父も年を重ね…

――それから20年の月日が流れます。Aさん、Bさんはともに退職を迎えて老後の暮らしに入りました。Cさん、D君も成人となりお互いがそれぞれの家庭を築きました。

 

20年前に再婚したということも、新しい家族を築いていくことに大きな不安を感じていたこともすべて「あんなこともあったね」と楽しい思い出に変わりつつありました。

 

ところが、この先さらに20年の年を経て、こんなはずではなかったというときがCさんに訪れます。