感情面で大きなためらいがある「養子縁組」
戸籍における関係をあまり重視せずに、実際の人間関係のなかで生きていくということは当然にありえる話なのですが、その状態はともすると単なる赤の他人という関係になってもしまいます。
養子縁組というのは法律的な権利義務の関係が生じることになること以外に、感情面での課題が生じる可能性がありますから、決して簡単な判断とはいえないでしょう。それでもAさんを親身にお世話したCさんが、蚊帳の外の人になってしまうという現実は、ともに暮らして支えてきた経緯を考えるとあまりにやるせない事態ではないでしょうか。
Aさん、Cさんはどうすればよかったのでしょう? 非常にシンプルな答えとして、遺言書を書いておくということが挙げられます。遺言書さえあれば、万が一Aさんの弟たち兄弟が遺言書の内容に不平不満があったとしても、兄弟姉妹には遺留分という最低限の遺産を請求できる権利はありません。
遺言書のとおりに遺産をCさんが受け取ることができます。また、月日が流れたなかでの養子縁組であれば、再婚当時と大きく気持ちも状況も違うでしょうから、Aさんの晩年にきちんと養子縁組をしておくということもひとつの選択肢です。いずれにしろ、Aさんが元気なうちにしておく必要がある手続きです。
「遺言書」「養子縁組」という言葉だけを見ていると難しくて、ハードルが高く感じる心理的プレッシャーがあるかもしれませんが、内容のシンプルな遺言書であればさほど難解なことではありません。養子縁組の手続きも複雑な手続きではないのです。
元気なうちに意思表示をして、築き上げた新しい家族、親子関係の思い出、感謝の気持ちのなかで暮らして、人生をまっとうしたいものです。人生を生ききるうえでの準備、そのうえでの必要な手続きは必ずやっておきたいものですね。
森 拓哉
株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン
代表取締役