日本では「生涯未婚率」が急上昇しています。多様性の時代、結婚だけが幸せの必須条件ではなくなりましたが、未婚のまま過ごすことによって高まるリスクが存在するのもまた事実です。本記事ではAさんの事例とともに、生涯独身を貫く場合に必要となるリスク管理について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
孤独を愛する年収690万円・貯金4,000万円の独身男性、事故物件の隣室に住まう徹底ぶりも…齢49歳、「最高のおひとり様人生などない」と悟った瞬間【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

関東地方の中小企業に勤務する会社員のAさん

<事例>

Aさん 会社員 49歳

未婚(婚姻歴、子供なし)

年収 690万円

貯蓄 4,000万円(普通預金のみ)

家賃 10万円

北海道出身

 

Aさんは関東地方の中小企業に勤務する会社員です。

 

結婚はしたことがなく独身。これまで女性と交際したこともありません。恋愛に興味がないということ以上に、人間関係全般が苦手なのです。会社員も長いので仕事上は他人とコミュニケーションを取ることができますが、あまり続くと疲れ果ててしまいます。自分の意見を言うことが子供のころから苦手で、すぐに周囲に合わせてしまい結局疲れてしまうことの繰り返しでした。

 

仕事ですら疲れてしまうのに恋愛なんてとんでもないと、ずっと避けてきたのです。

 

Aさんは若いころには趣味がいくつかありました。大型バイクもそのひとつです。仕事で疲れた夜は少しバイクを走らせると気分転換になりました。長期休暇のときにはひとりで遠出をし、温泉宿などに宿泊することも多くありました。両親が健在だったころは、実家のある北海道の函館市までバイクで帰省することもありました。青森でフェリーにバイクを積み、津軽海峡を眺めながら乗船するのが楽しかったといいます。

 

また、筋トレや古い喫茶店めぐりも若いころの趣味でした。どの趣味も「他人と関わらなくて済む」という点で共通しています。

 

住まい選びにも人付き合いの苦手意識が反映されていて、現在の住まいは賃貸マンション。隣の部屋には住民が長く入居していません。隣の部屋はかつて住民が自殺をしてから2週間ほど放置されていた現場だったのです。いわゆる心理的瑕疵物件であるため入居希望がまったくありません。常に空室です。

 

Aさんがその隣の部屋を借りるときに不動産業者は状況を告知してくれました。Aさんが借りようとしている隣の部屋にまで異臭がし、引っ越してしまったと言われました。現在はクリーニング済みであるため異臭はありません。

 

一般的な感覚では「気持ちが悪い」と思うものかもしれませんが、Aさんにとっては「朝、隣人と顔を合わせなくて済み、物音が聞こえてくることがない」というのは、何物にも代えがたい快適さなのです。その一点が気に入って入居を即決したAさんでした。

 

Aさんは職場でも必要以上のコミュニケーションを避けています。

 

職場の歓送迎会も15年以上断り続けています。社員旅行などの社内行事も同様です。指導するべき部下ができることも嫌い、昇進も拒み続けています。かといって仕事を怠けていることはなく一生懸命であるため、会社としては面倒な存在であるのは否めません。

 

兄が2人いますが、どちらも出身地の北海道で結婚をし子供がいます。兄たちの家族と話をするのが億劫であるため、次第に帰省しなくなりました。相次いで両親が亡くなってからは一度も帰省していませんし、兄からの電話やメールも無視し続けています。

 

このように人間関係が苦手なAさんですから、恋愛なんてもってのほか。自分は自分の生き方で人生を謳歌している……そう考えて生きてきました。

 

ところが、2年前のある時期をきっかけにAさんは「最高のおひとり様人生などない」と悟ります。