憲法で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する「生活保護」。厚生労働省『被保護者調査』から、生活保護者の実態を紐解いていくとともに、生活保護世帯における「進学」について考えていきます。
生活保護を受ける「月収13万円以下」世帯の子ども…「大学進学は原則認められず」の絶望感

生活保護世帯は原則、大学進学は認められないが…貧困の連鎖、どう断ち切る?

生活保護の受給世帯では、子どもの就学は、原則として高校までしか認められず、生活保護費を大学や専門学校の費用に充てることはできません。

 

――うちは生活保護を受けているから……大学進学なんて贅沢だよ

 

子が抱える絶望感。しかし貧困の連鎖を断ち切るためにも「大学への進学」を望んだ場合は、どうなるのでしょうか。

 

大学等に進学する場合は「世帯分離」を行い、家族は引き続き生活保護を受けられますが、進学者に対しては生活保護費は支給されなくなります。つまり、家族は生活保護を打ち切られることなく、大学への進学は可能。ただし大学に進学する前にもそれなりにお金がかかります。そこで、生活保護世帯で高校等卒業後に進学する場合は、「進学準備給付金」として、自宅生には10万円、自宅外生には30万円が支給されます。

 

■入学金/授業料は?

大学や短期大学、高等専門学校、専門学校の授業料等に対しては上限があるものの、免除、または減額されます。国公立大学の場合は、入学金約28万円、授業料約54万円、私立大学の場合は、入学金約26万円、授業料は約70万円が上限です。

 

■奨学金の活用

昨今は、返還の必要がない「給付型奨学金」が拡充されています。国公立大学の場合、自宅通学生は月3万3,300円、自宅外通学生は6万6,700円、私立大学の場合、自宅通学生は4万2,500円、自宅外通学生は7万5,800円が給付されます。

 

国による支援だけで十分とは言い切れないまでも、自身の努力次第で貧困の連鎖を断ち切ることは可能。そもそも生活保護世帯からの大学などへの進学は認めないという現在の方針は、大学進学が当たり前になっている今の時代にはそぐわないという声も。一方で「大学進学は贅沢」という声も根強いのも事実。どちらにせよ、貧困が原因で進学を諦めざるをえない子どもがいなくなるよう、これからも議論を進めることが必要です。

 

[参考資料]

厚生労働省『2022年国民生活基礎調査の概況』

内閣府『令和3年子供の生活状況調査の分析』

厚生労働省『令和4年度被保護者調査』

厚生労働省『子どもの進路に関する情報【○カツ!】』