定年退職の節目を機に、再就職ではなく「起業する人」が増えてきています。しかし起業しても、当然全員が上手くいくわけではありません。成功する人と失敗する人がいますが、両者のあいだにはどのような違いがあるのでしょうか。本記事では、とある大企業に勤めていた対照的な2人の事例とともにシニア起業の成功例と失敗例について、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
見下していたのに…「年収4,000万円」だった61歳・元大企業取締役、退任から5年後、「年収900万円」だった元同期を妬んだワケ【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳、会社とは無関係の「自分の好き」を武器に起業

森原さんと同期入社であった石田さん(仮名)は、経理部門の部長代理職で60歳定年を迎えました。定年直前の年収は900万円程度でした。再雇用も可能でしたが日本人男性の平均健康寿命は73歳程度といわれるなか、定年を機会に自由な時間を優先しての独立起業を以前から考えていました。

 

文章を書くのが好きな石田さんはサラリーマン時代から個人投資家として、株式投資とFXやCFDトレーディングに関するブログを趣味で開設していましたので、そのサイトに広告を貼り成果報酬を得るアフィリエイターを始める計画を立てていたのです。

 

これであれば自宅で開業できますし初期費用もほとんどかかりません。起業して1年目の収入は50万円にも届きませんでしたが、これも想定内です。石田さんはほぼ毎日ブログ記事を更新する一方、検索上位に表示されるようなSEO対策も怠りませんでした。

 

そのような努力の積み重ねもあり、そしてもちろん石田さんが書く記事そのものの内容も面白く知的に充実していることもあって、起業6年目となる現在の1日アクセス数も4,000PV前後にまで伸びて平均月収も30万円程度となりました。

 

これは65歳から公的年金の受給も開始した石田さんにとっては十分すぎる金額です。また石田さんの場合は青色申告の個人事業者としての資金管理能力も高く、小規模企業共済にも加入するなどして節税対策にも余念がありません。

 

「好きなことでお金を稼げて、毎日の生活に張り合いがあることが一番だ。ブログはどこでも書けるからまだ体力があるうちに、もっと旅行なども楽しみながらあと10年はこの仕事を続けたいね」と石田さんは目を輝かせていいます。

 

森原さんの耳にも石田さんの噂が届き…

ある日、古巣の飲み会で石田さんのことを耳にした森原さんの心にはモヤモヤとしたものが現れます。帰宅して、石田さんのブログを検索してみてみると、生き生きと自分の好きなことについて熱く語る石田さんの姿が目に浮かび、森原さんは悔しい思いでいっぱいになりました。

 

「会社員としては確実に俺のほうが上だったのに。起業で安定した収入を得られるなんて、すごいな。俺とあいつとは、なにが違うんだ……」